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ジョジョ第4部の主人公である東方仗助。
彼は特徴的なリーゼントの髪型をキメてますが、それを貶されるとプッツンくるという設定です。
ジョジョの奇妙な冒険 第29巻より
このリーゼントは自分の趣味で始めたわけではなく、幼少期に彼を救った恩人に憧れてその髪型を真似しています。
この恩人である学ランの少年は最後まで謎のまま終わったわけですが、ファンの間では彼の正体は「過去に戻った仗助ではないか?」などと言われていました。
或いはパラレルワールドである第8部に登場する仗助に似た空条仗世文ではないかという説を出す人もいます。
しかし、この説は絶対にありえないというお話です。
幼少期の思い出
仗助は4歳の頃にディオがスタンド能力を発現させた余波を受けて生死の境を彷徨う高熱を出しました。
母親の東方朋子は仗助のために車を出して病院に向かいましたが、折り悪く杜王町は18年ぶりの大雪が降りつもり車は雪に足を取られ、進むことも戻ることもできない状態になってしまいました。
ジョジョの奇妙な冒険 第35巻より
その時に現れたのが、学ラン姿の少年です。
彼はどこかで喧嘩でもしたのか顔が傷だらけで一瞬母親は警戒しましたが、仗助が病気であると気が付いた少年は自分の学ランをタイヤの下に差し出して車を押して助けてくれました。
お礼も求めず名前も言わずに立ち去った彼の姿に憧れて、仗助はその彼と同じ髪型をしたわけです。
だから、彼はその髪型を侮辱されるとプッツンきてしまうわけですね。
さて、この恩人に関しては「母親がどれだけ探しても見つからなかった」とされ、結局誰なのかは最後まで明らかになりませんでした。
しかし、連載当時からこの恩人の正体は「過去に戻った仗助ではないか?」などとファンから言われていました。
同じく第4部のラスボス吉良吉影のスタンド「バイ・ツァ・ダスト」は時を巻き戻す能力を持っており、自分の正体を知った相手を誰にも知られずに殺害することができます。
つまりスタンド能力は時を超える力すらあるので、なんらかの理由で過去に戻った仗助が自分を救ったのではないか。ということですね。
この謎の少年=仗助説は作者が公式に否定していますが、「少年 仗助」などで検索すると、この説を肯定する記事は非常に多く、作者が伏線回収できなかったのだとか、最初に述べたように現在連載中の8部に登場するリーゼント頭が特徴の「空条仗世文」が伏線を回収してくれるのではないかと言われています。
しかし、この学ランの少年=仗助説は絶対にあり得ません。もちろん仗世文でもありません。
このことに関して作者自身が否定するコメントを出しているというのもありますが、それ以前に物語の筋としてあり得ないからです。
なぜ学ランの少年=仗助説は絶対にありえないのか
この物語の筋は「全くの赤の他人」が「自分に取って大切であろう物」を「見返りも称賛も求めずに差し出した」というものです。当時4歳の仗助は熱に浮かされながらもその少年の行いを見ており、その生き様を心に刻みました。
仗助のスタンド能力、クレイジーダイヤモンドは「他人の傷を治す」という他に類を見ない優しい能力です。
彼の自身の優しさにより発現した根底にあるのは、この学ランの少年の行いが強く心に残っていたからでしょう。
では仮に少年が未来の仗助自身であったら、このエピソードはどのように変化するでしょうか?
「自分自身」が「過去の自分という何よりも大切なもの」のために「命という最大級の見返りを得るため」にした行動になるわけですね。
どうですか。完全に台無しですよね。そりゃ誰だって、過去に戻ったときに自分がピンチなら何をさておいても救いますよ。
仗助という人物の性格を形作る重要なエピソードが、ごく普通の誰でもやる当たり前の話になってしまうわけで、もはやエピソードとして破綻していると言わざるを得ません。
だから、この少年が実は過去に戻った仗助だったなんてことは絶対にありえないわけです。
「あんな思わせぶりなエピソードなんだからきっと何か関係あるはず」という疑問自体がおかしいんです。
この話は少年が無関係だからこそ輝くエピソードなんですよ。赤の他人だからいいんです。というか赤の他人でなければ成り立たない話だと言い変えてもいい。
同様の理由で「実は8部に出てきた空条仗世文で伏線回収があるかも?」ということもありえないわけです。
何故このようなエピソードが挿入されたのか
この赤の他人に救われて学ぶというエピソードは第5部の主人公ジョルノにも同様のものがあります。
ジョルノの父親はDIOで養父はジョルノを殴ってしつけるような最低の人物でした。
しかし幼少期にあるギャングと出会い、その人物から敬意を学んだ彼はまっすぐした青年に育ちます。
仗助とジョルノに共通しているのは父親の不在です。
ジョジョは誇り高き血統を繋いでいく物語ですが、仗助もジョルノも傍流であり、その気高さを教えてくれるはずの父がいませんでした。
そのため、この二人には主人公としての資質を与えるためにエピソードが必要と荒木飛呂彦先生が判断したのだと思います。
この学ランの少年について、荒木先生は第3部OVAのおまけインタビューにおいて「これは仗助の美しい思い出」と回答しています。
学ランの少年の正体は明らかになりませんでしたが、彼が赤の他人であることは間違いありません。
ましてや「本当は仗助の予定だったが作者が伏線をうまく回収できなかったから誤魔化した」なんてこともありえないわけですね。
全くの赤の他人だからこそ美しい思い出となりえるのですから。