
今回はダークソウルの世界設定についての「モチーフ考察」を行っていきたい。
モチーフ考察とは、作品の由来であろうものを類推して、そこから作品内の繋がりを考察するものであるが、当然ながらモチーフはモチーフに過ぎず(公式で明言されていない限りは)どこまで採用されているかも定かなものではない。
よって、ここから語ることは当然正道の考察とは大いに異なるものであるし、そういったモチーフ考察を忌避される方もいることを承知の上での与太話であるとして異端の名のもとに記していきたい。
ダークソウルと北欧神話の起源
ダークソウル世界の創世と北欧神話の世界の起源は非常に類似点が多い。
まず北欧神話の世界の起源は古エッダ「巫女の予言」には次のように記されている。
それは古き時のこと
そこにユミルが住んだ
砂浜もなければ海もなく
冷たい波もなかった。
地面はどこにも見られず
上に天もなかった
洞は大口を開け
しかし草はどこにもなかった
http://www.asahi-net.or.jp/~aw2t-itu/onmyth/poeticedda/volspa.htm
北欧神話の原初の世界には、ただ始原の巨人ユミルのみがあり他には何もなかった。
その後主神オーディンを含む三柱の神々が生まれ、そして神々は巨人ユミルを殺害し、その死体から世界を作り出した。
アースガルズ(北欧神話)の始まりである。
*「巫女の予言」は複数あり詳細は異なるが「原初には何もなかった」ことはおおむね共通している。
そしてダークソウル世界の創世は次のようになっている。
古い時代
世界には灰色の岩と大樹ばかりがあり、朽ちぬ古竜が世界を支配していた
だが、いつかはじめての火がおこり
火と共に差異がもたらされた
そして火の傍から小さき者が生まれたが、王のソウルを見出して力を得たグィンら神々は、世界の支配者である竜に反旗を翻して、これを打ち倒して世界を支配した
「火の時代」の始まりである
北欧神話の世界の最初の支配者は巨人であり、ダークソウル神話における支配者は竜という違いがあるが、大まかな流れに類似点があることが見て取れる。
更に、ダークソウルの世界では竜と巨人には相関関係があることが示唆されている。
ダークソウルにおける巨大な人の像であるアイアンゴーレムは古竜の骨を核として使われている。
またDS2に登場した原罪の探究者アン・ディールは因果を乗り越えるために竜を生み出そうとしていたが、その材料として使用したのが巨人なのである。
館の中には大量の巨人の死骸が積み上げられている
そして、その研究は一定の成果を上げている。
彼は巨人のソウルを元にして竜を生み出すことに成功している。
彼の館を抜けた先にある祭祀場に屹立する強大な古の竜は、アン・ディールにより巨人のソウルから作られた存在なのである。
古の竜を撃破して手に入るのは「巨人たちのソウル」
これらのことから、ダークソウルの「竜」は北欧神話の「巨人」を大きく意識しているように思える。
なぜ神は竜と戦ったのか
グゥインら神々は何故竜と戦ったのであろうか。
古龍は煩悩とは無縁の生き物であり、現に灰の湖の古竜などは攻撃をしても反撃することもなくただ佇んでいるに過ぎない。
このことについて宮崎氏はゲームの食卓において、古竜の感覚は人間の理解を超越しており、植物に近いと答えている。
神が戦いを挑まなければ古竜が干渉することはなかったのではないか。
しかし、創造神話の観点から見れば、神が竜の打倒を目指すことには必然性がある。
そもそも竜とは、脱皮し再生を行うことで「不死と永遠の象徴」とされる大蛇をルーツをとしている。
この永遠の竜を神が打倒することで、永遠の停滞を終わらせて世界を創造することができるとされている。
つまり、竜を打倒しなければ「火の時代」を始めることができなかった。
だからこそ、グウィンは竜に反旗を翻すことを決めたのであり、戦いは必然だったのである。
そもそも竜のルーツは大蛇である。蛇は脱皮し再生していく姿から「自然の永遠の循環の象徴」とされる。このような特徴から古代の人々は、万物が生まれ、また還っていく大地を連想したのであろう。これが正しい神によって倒され、その死体から天地が創造されて世界ができた、というのが神話でよくある「天地創造」である。
http://contest.japias.jp/tqj2000/30110/ryu2.html
*プロローグにおいても「火の時代」は、火が灯った時でも王のソウルを見出した時でもなく古竜を破った時こそが「始まり」であると明記されている。
ダークソウルの「人間」と闇の妖精「ドヴェルグ」
さて、世界を支配した神々であったが、その下には人間の存在があった。
ダークソウル界の人間は、ダークソウルを見い出した小人の子孫である。
小人からダークソウルの欠片を受け継いだ人間は、闇の性質を持ち無限の可能性を秘めた存在であり、あらゆるものに変化する。
そしてそれを恐れたグウィンら神々により枷を嵌められることにより「人としての形」に固定されることとなった。
また作中では変化を繰り返すと蛆になることが明かされるが、蛆人の杖は人間の本質的な力により威力を増す性質がある。
さて、ファンタジー種族として非常に知名度の高いドワーフという存在がいる。
ドワーフとは北欧神話に登場する闇の妖精ドヴェルグ(Dvergr)を英語化したものであり、それは古ノルド語において小人を意味する言葉である。
彼らは元は巨人ユミルの死体から生じた蛆であったが、神々により人に似た姿を与えられた存在であったという。
ユクドラシルと岩の大樹
北欧神話には世界を体現したとされる世界樹ユグドラシルが存在する。
この世界樹は世界の中心に存在しており、そこを起点として神々の世界アースガルズが広がっている。
そして、その根の下に死者の世界や人間界があるという階層世界構造になっている。
北欧神話における世界地図
またこの図を見て分かる通り、神々の世界アースガルズはその上部が世界樹の葉によって覆われている。
ダークソウルは世界全体図というものは公開されていないが、こちらもまた北欧神話と同様に世界樹を中心とした階層世界構造となっていると思われる。
ダークソウルにおける世界樹は岩の大樹のことである。
ダークソウルは最終的に「最初の火の炉」を目指すことになるが、ここで火継ぎを行うと世界全体に「最初の火」が広がっていくことになる。
そして、この最初の火の炉は岩の大樹に存在している。つまり、岩の大樹こそが世界の中心であることになる。
そしてまたロードランもまたアズガルドと同様に、その上部が岩の大樹に覆われているものと思われる。
何故ならば、この神々の世界ロードランの樹木は、岩の大樹の子孫だからである。
岩の大樹の子孫であるということは、その岩の大樹の種がロードランの地に落ちて樹木として再び生長しているということになる。
ダークソウルが階層世界構造であるというのは、既に記事を書いているので詳細は割愛するが、神々の世界ロードランと人間界は隔絶されている。
ロードランは「人の世界とは別の世界」であり、「時のが流れが淀んで、通常の世界と異なるおかしな場所」であり「生身の人間が立ち入ることができない」「神々の領域」である
主神ロイドと主神オーディン、そしてミディール
さて、ダークソウルは白教を中心とした世界であったが、この白教の主神はロイドであった。
主神ロイドは、その名にLloyd(灰)を持つと同時にAllfather(主神)の称号を持っている。
Allfatherとは北欧神話においては主神オーディンの称号である。
主神オーディンは灰色の髯と灰色の髭を蓄えた老人の姿で表現され、またルーン文字に精通している。
ルーン文字はダークソウルの世界において神々の遺物や由緒正しい装備品に刻まれており、未だその内容について明らかになっていないが、文字自体に力が秘められていると思われる(ルーン魔術)。
またオーディンは、純粋な神ではなく男神と女巨人の間に生まれたハーフ(灰色の存在)でもあったという。
彼が主神と呼ばれた所以は巨人ユミルを殺し、その死体から世界を作り上げたからであるが、グウィンを差し置いてロイドが主神と呼ばれたのは、彼が灰色の世界から、現在の世界を作り上げたからなのかもしれない。
またオーディンと共通性が見られる神格としてケルト神話のダグザがいるが、彼もまたAllfatherの称号を持ち、その息子の名はミディールである。
ダークソウルにおけるミディールは灰の古竜の末裔であるが、神に育てられた存在であり、いわば神が親であると言える。
彼がどの神に育てられたのかは明らかになっていないが、もしかするとロイドに育てられたのかもしれない。
ラグナロク(火継ぎの終わり)
北欧神話は滅亡の書かれた物語となっている。
神々と巨人の最終戦争ラグナロクにより、世界は滅亡するというのはよく知られた話であるが、その滅亡はその後に再生するより良き世界への布石であることはあまり知られていない。
予言はオーディンへの語りかけから始まる。そしてヴォルヴァは、世界の創造に関する物語を短く語る。彼女は自身がいかにして知識を手に入れたか、そして彼女がオーディンの全知の源泉、および他のアースガルズの神々の秘密をも分かっているということを説明する。彼女は北欧神話の様々なエピソードに触れたのち、ラグナロクとそれに続く世界の再生について語って終わる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%AB%E5%A5%B3%E3%81%AE%E4%BA%88%E8%A8%80
同じくダークソウルの世界は火継ぎで延命を続けようとも、いつか火は絶え世界が闇に閉ざされる(滅亡する)ことを示唆されているが、その後再び火が灯る(世界が再生する)ことが語られている。
また絵画世界のお嬢様はダークソウル-過去の世界の遺物-を原料として新たな世界を描こうと試みてみる。
その世界は「きっといつか、誰かの居場所になるような」優しい絵であるという。
終わりに
最初に述べたようにこの記事は、ダークソウルの世界観と北欧神話等の類似性について述べたものであり、それ以上のものではない。
創作物とは複数の作品からインスピレーションを受けつつ、著者独特のオリジナリティを混ぜ合わせることで独自のテイストになるものである。
ダークソウルは神話的な流れを汲んだストーリーであるが神話そのものではないため、細部が北欧神話の流れと異なっているのはむしろ当然である。
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