ダークソウルシリーズには様々な装備品があるが、重厚でかつ優れたデザインの鎧と赤いマントのかっこよさからプレイヤー人気の高い、竜血騎士団装備。

初出はダークソウル2だが、ダークソウル3にも登場し、装備品のみならず古竜の頂で召喚されるエネミーとしても登場する。
さて、そんな人気のある竜血騎士だがその人気に及ぶほどの英雄譚を持つ騎士団でもある。
今回は、その偉大なる竜血騎士団が行った偉業を称えるお話となる。
騎士団による毒竜討伐
ダークソウル2の舞台となったドラングレイグの遥か地の底には、聖壁の都サルヴァと呼ばれたい国があった。
その国は人々を苦しめる毒竜の脅威に晒されていたが、そのことを憂いた英雄ヨアの率いる竜血騎士団が毒竜の討伐をするためサルヴァに赴いた。

英雄ヨアは幾多の困難を乗り越えて竜の寝床に到着し、邪竜を自らの槍で貫き討伐したが、恐るべき邪竜はなんとその身に溢れんばかりの毒を蓄えていたのだった。
討伐に成功するものの竜の身から溢れ出た毒により英雄ヨアは死に至り、竜血騎士団は壊滅した。
人々のために自らを犠牲にした竜血騎士団の生き残りは、その祝福を持って、奇跡と戒律の国リンデルトを建国し、人々を導いたという。

と、リンデルトではこのような全くデタラメな建国譚が信じられている。
サルヴァと竜血騎士団の真の歴史
聖壁の国のサルヴァにおいて行われた英雄ヨアと竜血騎士団の鬼畜の所業については割とアイテムテキストに明確に記されており、それを読み解けば実際にどのようなことが起こったのかが明確に分かるようになっている。
これは、曖昧な表現で濁されていたり想像の余地に任せる内容が多いソウルシリーズの世界設定の中ではわりと珍しい。
それでは、テキストから読み取れる真の歴史を紹介していこう。
かつて聖壁の都サルヴァは深い地の底にあった。
深い地の底は元々地から毒が吹き出す暗黒の地であったが、眠り竜シンがその毒を引き受け、そして眠りについた。
この地に王国を築いたサルヴァの民は、自らの身に毒を引き受け続ける竜を崇め、その眠りを慰めるために巫女が唄を歌い続けた。

さて、とある名前が失われた国には竜の血を信奉し、その血を浴びることで偉大な力が手に入ると信じる竜血騎士団が存在した。

ダークソウルの世界からは既に古竜は駆逐されており、残るのは竜の紛い物と呼ばれる飛竜ばかりであった。
その最中、遥か地の底にある国にその求める真の竜が存在することを知った竜血騎士団は、英雄ヨアを筆頭としてサルヴァに侵略戦争を開始したのである。

戦いは激しく、サルヴァの守護騎士は己の肉体を捨ててまでして戦ったが、凶悪無比な竜血騎士団の前に敗北。サルヴァの王は殺害された。
王を殺害したヨア率いる竜血騎士団は、聖壁の最奥、眠り竜の褥にてまどろむシンに対してその血を浴びるべくは槍を突き立てた。
しかし、シンは地の底から吹き出す毒をその身に受け止めることで人々を守っていたのであった。
槍を受けて目覚めたシンは自ら引き受けていた毒血を放出してしまった。
偉大なる竜の血と信じ、毒をその身に浴びたヨアはそのまま死亡し、サルヴァは溢れ出る毒に沈み崩壊してしまった。


そのままだとただの自業自得で終わる話なのだが、竜血騎士団はサルヴァから逃げ出す際に、自らの欲望と過ちで滅びる国を省みるどころか、どさくさに紛れてサルヴァの秘儀と叡智を盗み出し、その力を持って奇跡と戒律の国リンデルトを建設した。
そして、竜血騎士団は死人に口なしとサルヴァ滅亡の真実を隠蔽して、ヨアを英雄として祭り上げたのである。
「我々は人々を苦しめる毒竜を討伐し、偉大なる英雄がその犠牲になった」のだと。
あまつさえ、サルヴァの叡智を盗んだのは「力及ばず滅んだ国の叡智を引き継ぐのは我々の贖罪でもある」と嘯き、奇跡と戒律の国リンデルトを建国したのである。

そしてこの建国の真実は古竜院の奥深くに秘儀と共に秘められ、その謎に近づこうとするものは人知れず殺害されることになる。

欲望のままに一国を滅ぼした上で、盗み出した叡智を掲げて奇跡の国を建国するなどまさに盗人猛々しい言えよう。
それから幾星霜の時が過ぎ、ダークソウル3の時代では既にサルヴァもリンデルトの名も失われ、ただ竜の血を信望する竜血騎士団の名前と装備品だけが残されている。

考察①ヨアの死体と装備品
ゲーム内では眠り竜シンのいるステージ端には「ヨアの指輪」を持った死体があるため、彼がおそらくヨアなのであろう。

またシンを貫いたヨアの槍は刺さったままになっている(どうでもいいが、槍のサイズ大きすぎではないだろうか……)

考察②サルヴァから奪った「叡智」とはなんなのか
前述のとおり、リンデルトの叡智にはサルヴァが深く関わっているが、具体的にどの叡智が奪われたものなのかは判然としていない。
サルヴァの深層である「竜の聖壁」には亡者と化した竜血騎士と空になった宝箱が大量に配置されていることから、主にこの場所に隠されていた叡智が奪われたものだろう。
しかし、かろうじて略奪を逃れたものには汎用的な消費アイテムがあるのみなので元の品物を推測する事は困難になっている。
この「叡智」に関しては個人的に二つの説があると思っている
考察②ー①「最初の死者ニト」の叡智である説
サルヴァに向かうにはクズ底のさらにどん底である「黒渓谷」のボスである腐れを倒した先からワープする必要がある。
この腐れはニトの系譜を受け継ぐボスとなっている。(篝火2以上で「古き死者のソウル」をドロップ)
またサルヴァ内の宝箱で手に入る引き合う石の剣はクズ底の奥深い場所でしか取れない素材で製作されている。

逆に、サルヴァに入るための「竜の爪」は黒渓谷で入手できるようになっている。

そもそも黒渓谷とクズ底には大量の毒地蔵が設置されておりプレイヤーを苦しめてくる。

みんなのトラウマ、地蔵地獄
この地蔵は本来毒は持っておらず、周囲に存在するものを吸収する性質を持っているようで、マデューラのように周りに害のない場所ではなにも影響はないが、石化トラップが仕掛けられている死者の洞に存在するものは石化ブレスを吐くようになっている。
サルヴァは王の二つ名が「深い底の王」であり、クズ底と黒渓谷もドラングレイグ奥底にあることや、双方に関連性のあるアイテムが残されていることから地質的にも隣接していたと思われる。
この地に毒が溢れているのは、シンがヨアの一撃で毒を放出した際に溢れ出たものがであろう。
さて、ここで気になるのが先ほど述べたサルヴァの叡智を受け継いだ古竜院の存在である。
ゲーム上では彼らは、アマナの祭壇で登場するのだが、なぜ彼らがこの地に配置されているのかは全く説明がない。
このアマナの祭壇は「大いなる死者・ニト」の眷属であるミルファニトたちの聖地である。
このアマナの祭壇の大きな塔にある篝火の名前は「祈りの塔」となっているのだが、実はサルヴァにある大きな塔の篝火の名前も「祈りの塔」であり、この二つの場所には関連性があることが示されている。


つまり、古竜院がアマナの祭壇に訪れているのは、それがサルヴァの叡智に関わるものだからであろう。
アマナも黒渓谷も大いなる死者であるニトの影響が強い地であることから、サルヴァの叡智とはニトの技だったのではないだろうか。
またサルヴァの地に残されている魔法のうち、「約束された平和の歩み」は前作の「穏やかな平和の歩み」と名前も効果も非常によく似ているが、この魔法はニトの領域である地下墓地に残されていた。
考察②ー②アノール・ロンドの叡智である説
しかし、この説には重大な疑問点がある。
それは現存するリンデルトのアイテムにニト関連のものが全く存在しないという点である。
先ほども述べたがリンデルトは竜血騎士団の残党がサルヴァの叡智を受け継いで建国した国である。
竜血騎士団は、竜を信望する武闘派の集団だったが、その後を継いだリンデルトは打って変わって奇跡と戒律の国になるなど様相が一変してしまっている。
つまり、現在リンデルトが掲げているものはサルヴァから奪った叡智である可能性が高いということになる。
では、リンデルトに現存しているものがなにかというと、王女グウィネヴィアと絵画世界を含む、アノール・ロンド関連のアイテムが多数見受けられること。
太陽の光の癒しと太陽の光の恵みはグウィネヴィアの奇跡をそのものであるうえ、それ以外の「生命沸き」「溢れ出る生命」は太陽の光の恵みと同じHPリジェネの奇跡であり、毒を治しHPを回復するという「聖院の護符」はグウィネヴィアの祝福した「女神の祝福」の劣化版と言える効果を持っている。

また、リンデルトの聖院で製作されている守り人シリーズはダークソウル1でエレーミアス絵画世界を守っていた絵画守りシリーズとほぼ同一となっている。

更にリンデルトの製品である魂の加護の指輪(命の加護の指輪)は修理可能という点を除き、罪の女神ベルカの御業である犠牲の指輪と同一の効果を持っている。

このようにリンデルトの「奇跡と戒律」のほとんどはアノール・ロンドの流れを汲むものとなっている。
これらの御業が外部から流入したのであれば、それはやはりサルヴァの可能性が高いのではないあろうか。
しかし、一つ気になる点がある。
そもそもサルヴァの民は何故この地に王国を築いたのであろうか。
遥か地の底、毒の脅威に塗れた地が王国にふさわしい場所とはとても思えない。
そもそもクズ底とは、あらゆる忌まわしきものが捨てられた場所であり言わば、「世界のごみ捨て場」であった。
そこに捨てられて戻ってきた者は存在しない。


このことから考えられるのはサルヴァの民は忌み人だったのではないだろうか。
忌み人と言えば鴉人であるが、絵画世界の例を見るに必ずしも忌み人は鴉人とは限らず通常の亡者も存在しているし、聖壁の巫女が身に着けていた歪な装備品は彼らの異形を想起させる。

彼らが忌み人でありベルカを信仰していたならば、絵画シリーズや犠牲の指輪の関係は理解できるとしてグウィネヴィアはどこから出てきたのだろうか?
実は、エレーミアス絵画世界には、グウィネヴィアの関与が見受けられる。絵画が安置されている部屋には彼女の像が絵を見守るかのように設置されているのである。

絵画の忌み人たちがグウィネヴィアの情に感謝し、サルヴァに移り住んだのちもその奇跡を語り継いでいったのだろう。