お代はラヴでけっこう

【原神考察】自由なる風は翼を求めて恋焦がれる――「ウェンティ」の物語

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この話は、基本的には資料を基に記載していますが物語として、個人的な憶測考察が含まれていることをご了承ください。

やあ、モンドへようこそ。そこの旅人さん。
モンドに来たなら、この吟遊詩人ウェンティからモンドの歴史の唄を聞いていかないかい。
お代は、今ならなんと大サービスで蒲公英酒1杯だ!
聞いていってくれる?やった!それじゃなんの話にしようか。風神の話がいいって?
風神バルバトスはもうモンドから居なくなってるのにな……。まあクライアントからの依頼だから仕方ないから。そうだな、なんの話にしよう。氷神から杖を盗んだ話がいいかな?
え?そういうんじゃない、本当の本当の話を聞きたいだって?僕の話は全部真実なのに。

……さて……君はそれを誰から唆されたのかな。
うーん、別にいいんだけさ。でも深い秘密を知るにはそれ相応の代価が必要だ。
風神の秘密に値する代価……それがどれほどのものか分かってるかい?
全てを覚悟の上だって?仕方ないね……。それじゃあ代価の話をしよう。

エンジェルズシェアのお酒の37杯でどうかな。

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……よし!契約成立だ。
それじゃあ君をこれから、悠久の風に乗って遥かなる過去へ連れて行こう。全ては自由の風の導くままに……だよ。

目次

魔神戦争勃発(3000年以上前)

これから僕が話すのは今から3000年以上前のこと。
テイワット大陸では、各地で強大な魔神たちが相争う魔神戦争が起こっていたんだ。
彼らは七つの神の座を巡って各地で戦いを起こした。

当時のモンドの中心地は今で言う風龍廃墟の場所にあったんだよ。
だから今のモンド城のことを「新モンド」と言い、風龍廃墟のことを「旧モンド」と言う人もいるんだ。

最近風龍廃墟と呼ばれた場所は、かつての烈風の魔神「デカラビアン」が作った王都だった。
当時のモンドを支配していた魔神の名はデカラビアン。人は彼のことを「高塔の孤王」とか「竜巻の魔神」とも呼んだんだ。
   ―——高塔の王の瓦

それに対抗していた魔神が北風の王狼アンドリアス
彼は狼の魔神でその強力な力でデカラビアンと戦ったが敗れてしまった。
彼の肉体は死んでしまったけれど、魂は今でも残滓が残っているんだ。
流浪の狼は奔狼領に住み着き試練を乗り越えるものを待っている。それが今の四風守護の一つ北風のボレアスなんだよ。

彼は人間嫌いを標榜しているんだけど、赤子には罪がないという心情を持っていて、狼の森に捨てられた赤子は彼らの運命の家族ーー「ルピカ」になれるそうだよ。
もしかしたら、君の知っている人の中にもいるかもしれないね。

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狼の生活において、殺戮、死に至る戦闘などの状況はよく見られる。
「アンドリアス」は人類は失望をもたらすが、純真な赤子に罪はないと考えている。
狼の群れが子供を選び、その子もまた狼を選んだら、彼らは「ルピカ」ー運命の家族になれる。
   ―——凛風奔狼の砕牙

さて、アンドレアスを退けたデカラビアンだけれど、彼は「竜巻の魔神」と呼ばれるに相応しい、とても強力な風の力を持っているんだ。
そして彼は臣民を守るために風龍廃墟を暴風の力で囲った
彼は自分の力で臣民を守る名君だという自負があった。これで外部から民を脅かすものは現れない。

高塔の上に君臨する風の君王は「竜巻の魔神」デカラビアン。狂風に吹かれ跪いている臣民を睥睨し、その光景を従順と捉えた彼は、満足していた。
   ―——ウェンティ:キャラストーリー3

だけどね。彼が気が付いていなかったんだ。安全だけれど、どこにも行くことができない鳥籠を強制される民の気持ちを。

人と魔神は――これほどまでに「違う」存在だということを。

グンヒルドと千風の精霊(2600年前)

そして、それから400年の歳月が過ぎ去った。

デカラビアンにはたくさんの部下がいたけれど、その中でも特に力を持っていたのが、今ではグンヒルド一族と呼ばれるようになった人たちだ。

しかし、グンヒルドの父はデカラビアンの暴政に耐え切れず離反し、旧モンドから飛び出していった。

だけどね。当時のモンドは氷原と吹雪に包まれた極寒の地だったんだよ。想像がつかないって?
それも仕方がない話なんだ。烈風の王と北風の狼の激しい戦いはモンドの環境を激変させてしまった。

遠い昔、烈風の君王と北風の王狼の戦いは、モンドの大地に砂のような風雪を巻き起こした。
   ―——祭礼の断片(武器物語)

荒れ果てたモンド氷原では、グンヒルド一族が流浪の民の中で一番強い部落の首領だった。
グンヒルドの父親はデカラビアンの部下であった。孤王の暴政に耐えきれず、彼は一族を率いて暴風が咆哮する古い城から逃げ出した。
   ―——書籍:グンヒルドの逸話

とにかく、当時のモンドの外はとても人が住めるような環境じゃなかったんだ。
暴君から逃げてだしたはいいものの一族は寒さと暴風により絶体絶命のピンチに陥ってしまった。
そんな中で、グンヒルドが敬虔な祈りを風に捧げると、千風の精霊がその祈りに答えた。
祈りが精霊の力になり、精霊はその力を一族に分け与えたんだ。

一族が絶体絶命の時、千風の中の精霊がグンヒルドの祈りを聞いた。こうして、族長の幼い娘が捧げる敬虔な祈りと、吹雪に見舞われた一族の願いが信仰へと変化した。信仰が風の精霊の周りに集まり、まるで水が泉に流れるよう、風の精霊たちに力をもたらした。やがて、彼はこの一族に小さな避難所を提供し、自分の力を族長の娘に分け与えた
   ―——書籍:グンヒルドの逸話

そのおかげでグンヒルドの一族は、暖かい寝床を得て安心した暮らしを送れるようになった。

そして、実はね。風神バルバトスはかつては無数に存在する千風の元素精霊の一つに過ぎなかったんだよ。
だけどグンヒルドの敬虔な祈りがただの元素精霊に過ぎなかった存在に力を与えたんだ。
そしてグンヒルトから旧モンドの現状を聞いた時、その精霊は旧モンドを訪れてみることにした。

だってそうだろう?風はどこまでもいける自由を象徴している。
この世界に自由が奪われている人たちが他にもいるだなんてほっとけないじゃないか。

え?その精霊は立派なやつだって?えへへ、照れるなあ。
なんでお前が照れるんだって?気にしない、気にしない。

ライアーの少年と千風の精霊

さて、その精霊は北領から旧モンド王城―—弧王の鳥籠―—に入ると、歌の好きな一人の少年に出会ったんだ。

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好奇心旺盛な少年と精霊はすぐに仲良くなった。
少年は歌が好きでいつもライアーを弾いていたけれど、その素敵な音楽はすぐに王の暴風でかき消されてしまった。少年が天空を見上げると、そこにあるのは風に閉ざされた暗闇しかなかったんだ。

彼はこの鳥籠の中で生まれ、外の世界を一切知らない。
彼が知る外の世界とは物語の中で語られる想像のものでしかなかったんだ。

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「鳥が自由に飛ぶ姿を見たい」

少年がそう呟いたとき、風の精霊の気持ちは決まった。
僕たちは仲間を集めて暴君に反旗を翻したんだ。

当時のウェンティは、北境の大地で咆哮する千風のうちの一つであった。
後世に「バルバトス」と称される彼は、その時は魔でも神でもなく、風の中に流れる微小な元素精霊で、「小さな転機と希望をもたらす風」であった。
かつてのモンドで、ウェンティはある少年と出会った。少年はライアーが得意で、一番美しい詩を書くことを目標としていた。
「僕は、鳥が自由に空を飛ぶ姿が見たいな」
風の壁の中に生まれ、青空と鷹、緑の草原を見たことのない少年は言った。狂風の音は彼の声をほとんど覆い隠した。
「友よ、一緒に見に行かない?」
   ―——ウェンティ:キャラストーリー3

たくさんの人たちが少年と精霊に協力してくれた。
赤髪の流浪騎士、弓使いの少女アモス、そしてグンヒルドの一族。

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「そうだ、俺たちは『風の花』だ」と赤髪の流浪騎士がそう呟いたとき、彼らの合言葉は「風の花」になった。

風の花って知っているかい?
風の花は烈風と極寒で育ち、乱舞する氷晶の中で咲く。強風で根こそぎにされる普通の草花とは違い、この花は、風が強いほど根も強くなる。

それは自由を望む魂、風を追う勇気。それは存在しないようで、どこでにでもあるもの。それが風の花。

まさに暴風の魔神デカラビアンと相対するレジスタンスたちにピッタリだと思わないかい。

「風の花」と呼ばれる花は、風が強いほど根も強くなる
今では、暴君に反抗した長き戦いは祭日の逸話として語られている。
花の姿も日につれてぼやけ始め、遠き風のような琴の音の中に溶け込んだ。
   ―——風花の頌歌(武器物語)

祭日の逸話というのが気になるって?
君は|風花《ウィンドブルーム》祭を知ってるかな。
そうだよ、モンドで行われる風花祭は、今では愛と自由の祭りとなっているけれど、本当はかつてモンドの人々が暴君に立ち向かったことを祝う祭りだったんだ。

そこで風神に捧げられる「風の花」は蒲公英だったり風車アスターだったりと、捧げるその人が決めるものなんだよ。

え?当時咲いていた「風の花」の正解はなんだって?
さっき説明したじゃないか。「風の花」とは竜巻の魔神に立ち向かう人々の心に咲いたもの。分かるだろう?つまり、「風の花」は現実には存在しない。だから「正解」なんてないんだよ。
僕たちの自由を願う心の中にある花が本当の「風の花」なんだ。

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合言葉を胸に彼らは「自由」を求めて戦った。戦える者も戦えない者もみな手を取り合って一致団結したんだ。

尖塔に登れない体の弱い者たちは、普段小さい声でしか歌えなかった。
しかし、あの乾杯と送別の歌を、城壁が揺れ動くほどの勢いで歌い、旗を揚げた勇者たちを応援した。
「誰かに舌を抜かれても、目で歌える」
「誰かに目を刺されても、耳で聞ける」
「でも、誰かに歌う自由と眺める自由を奪われたら」
「――それは、絶対に、絶対に容赦しない」
   ―——蒼古なる自由への誓い(武器物語)

こうして「風の花」の精神の元に立ち上がった彼らは、ついに魔神の住む塔についに突入できた。

戦いは激しかった。絶大なる魔神の力を前にして、彼らは多大な犠牲を払ったんだ。

弓使いの少女は、愛する王に矢を捧げそして散った。

あれは北風の僭主と高塔の君王が戦った時である。
女性の弓使いは君王に愛されていると勘違いしていた。
戦いの最後、反逆の風が吹いた。
無名の少年、無名の精霊、無名の騎士と共に、
塔の最上部に入り、風中の孤高なる君王に挑戦した。
「こうすれば、彼は見てくれるよね」
だが、彼女が弓を引いたその瞬間に、
烈風の王が彼女を引き裂いたその瞬間に、
彼女はやっと気づいた。自分と彼との間に雲泥の差があることに。
   ―——アモスの弓(武器物語)

そして、自由の鳥に憧れた少年もまた、輝ける空を見る前に命を火を失ってしまった。
だけど、きっと彼は後悔なんてしていないよ。歌と空と鳥と仲間のために全てを賭けた彼は何も間違っていない。
僕はそう信じている。

かつて、君王は臣民に苦しみのない温かい住処を提供した。死の直前までに、自分が臣民を愛するように、自分は臣民に愛されていると君王は思っていた。
勝利を手に入れたが、ウェンティがこの羽根を少年に渡せる日は来なかった。少年は抗争の中で、詩歌と青空、空を飛ぶ鳥、そして同じ風の壁の中に生まれた同士とのために、戦死してしまったから。
  ―——ウェンティ:キャラストーリー4

悲しみを乗り越えて戦い尽くしたモンドの人々は、ついに暴君を打ち倒した。
敗北の直前まで、彼は自分の行いが民を愛するものだと自負していたけれど、それはきっと間違った愛だったんだ。魔神である彼がそれを理解できたのかは分からないけれど。

そして魔神を倒したその瞬間、風の精霊に身に不思議なことが起こった。
精霊の指先に巨大な力が溢れだしたんだ。その力を得て無名の精霊は風神バルバトスに昇格した。

古い神の座が崩れ、新たな神が誕生した。風神バルバトスは、指先に流れる力を感じた。
この力の最初の使い道は、少年の姿を借り、自分の形を作ることだった。
――人の身体がないと、少年が大好きだったライアーをきちんと演奏できないからだ。
   ―——ウェンティ:キャラストーリー4

戦いが終われば、人の関係も変化する。

グンヒルドの一族はバルバトスを新たな神であると認めて、戴冠の儀を行った。

風の神バルバトスが孤王に宣戦布告した時、彼女は一族を率いて神の怒りに直面した。そして、バルバトスが遂に狂風から人々を解放した時、新生の風神に桂冠を被せたのも彼女だった。
   ―——書籍:グンヒルドの逸話

そう言えば、モンドの誇る代理団長ある西風騎士のジン・グンヒルド彼女の子孫なんだよ。

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「モンドを守る」という誓いがグンヒルド家の家訓だけれど、これは元々グンヒルドが風神と交わした誓いと約束だったんだ。
そして2600年経った現在も、グンヒルド家はこの約束を守り続けている。

グンヒルド家は、西風騎士団に数多くの偉大なる教士や勇敢な騎士を輩出した。この一族は祖先の理想と風神との約束を守り、永遠にモンドの土地と民を守り続けるのだろう。
    ―——書籍:グンヒルドの逸話

そして次は赤髪の流浪騎士だ。

アカツキワイナリーのディルックの旦那に似てるって?

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ふふ・・・どうだろうね。精霊が「バルバトス」になった時、彼は神の前から立ち去りその名は歴史の影に埋もれてしまったんだ。いつか掘り起こす者が現れる日がくるかもしれないけれどね。

古き尖塔の廃墟、生まれ変わった人々の歓声、歌声、涙の中、
とある赤髪の戦士が新生の神に背を向け、浪に落ちる雨粒のように群衆の中に埋もれた。
彼は風の花で隠語を伝えた先駆者であり、夜明け前の長い暗闇の中でを迎える。
   ―——風花の頌歌(武器物語)

そう言えば、流浪騎士は「暁」を迎えて去っていったけれど、ディルックの先祖であるラグヴィンド「暁の騎士」を名乗っていたし、今では彼の子孫は「アカツキワイナリー」の継承者でディルック自身も暁にこだわっているようだね。

「すべての罪悪を駆逐する。
凡庸の人生だが使命を忘れるな、真のアカツキはまだ来ていない」
   ―——ウェンティ:キャラストーリー4

もちろん、流浪騎士が何も言わずに去ってしまった今では全ては闇の中さ。

だけど、もしそうだとしたらかつてての風神バルバトスの両翼にはディルックとジンの先祖が並び立っていたってことになるよね。

さて、話を戻すけれど、こうしてバルバトスとなった元風の精霊は風神としてモンドを守り続けた。

それから約600年が経過——今から2000年ほど前の話になるね――には魔神戦争が終結し、バルバトスは最後まで勝ち残った。

それにより彼は新たにモンドを統治する資格を得たんだ。七神——俗世の七執政として。

だけど、彼はそうしなかった。彼がしたことは住みよいモンドを実現するために氷雪を吹き散らして、山を切り開いた。

そして、彼は――いつの間にかモンドを去っていったんだ。モンドを自由の地にするために。何かを規定する王がいてはいけないんだと。

ライアーを奏で、神の風で氷雪を吹き散らし、山を一刀両断する。
新たなモンドを、自由の地にしよう、王のいない国にしよう。
そしていつか、とても素敵でロマン溢れる国になるはず…
「彼もきっとそんな場所で暮らしたいよね」
こうして、「新モンド」の幕が上がった。
   ―——ウェンティ:キャラストーリー4

だけど、「バルバトス」はモンド去ったけれど彼は人間の世界が好きで音楽を愛していた。
だから、バルバトスはライアーを引くために友であった少年「ウェンティ」の姿を借りて、今は人間の世界を歩き回ることにしたんだ。

バルバトスは人間の世界が好きで、「ウェンティ」の姿でモンドを気ままに歩くのが好きだった。彼は神に選ばれた者に倣って「神の目」に似ているガラスの珠を作った。
   ―——ウェンティ「神の目」

え?ウェンティってお前のことじゃないのかって?

あ!しまったなあ。ははは、ついうっかりうっかり。
コホン・・・そうだよ!じゃじゃーん!
なんと僕がその風神バルバトス本人なんだよ。

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‥‥え?そんなのありえないし、今までのも嘘に違いないから報酬は無しだって?

ちょ、ちょっと待ってよ!それはないよー。

ああー、しまったあの爺さんに「契約」の仕方をちゃんと教えてもらうべきだった・・・。がっくり・・・。

‥‥昨日は散々だったなあ‥‥たくさんお酒が飲めると思ったのに。

お、また向こうから旅人がきたぞ。
前回は失敗したから、今回は旧モンドの話じゃなくてその続きからにしよう。

やあ、親愛なる旅人さん。今から風神バルバトスの話をするから聞いていかないかい‥‥?

旧貴族暗黒時代(1000年前)

今から僕が話すのは今から1000年前のことだ。

大昔の話なんだけれど、この時代のことは今でもモンドの歴史に影を残しているから聞いておいて損はないよ。

風神バルバトスは七神に選ばれたけれど、彼は自分が暴君になることを恐れてモンドから去っていったんだ。

だけど、さすがの彼も予想できなかったこととして、神の代わりに人間——貴族の暴君が現れたんだ。

それから、風神バルバトスがいなくなった後、モンドの大地に多くの貴族が立ち上がった一一神の力を持つ統治者たちは千年後、腐敗と暴虐で知られる。だが、さすがのバルバトスも百年、千年後の未来は予測できなかった。
    ―——書籍:グンヒルドの逸話

現在のモンドで旧貴族と呼ばれるローレンス家はモンドの中で最も歴史の古い貴族で、バルバトスに深い忠誠を誓っていた。
彼がデカラビアンに勝利したときは、新モンドに風神の像を建築したのもローレンス家なんだよ。

だけど1600年の歳月はローレンス家を堕落と腐敗に落としてしまった。

先祖が立てた誓いを破り、先祖が建てた神像を自ら打ち倒してしまったんだ。

二千六百年前、モンドの地で最古の血統は、
新風神が降り立って天地を作ったあとに、厳粛な誓いを立てた。
「永遠にモンドを護り、モンドの青き平原、山と森に永遠の命があらんことを」
「永遠にモンドを護り、暴君の如き風雪と風雪の如き暴君に困ることなく、永遠の自由があらんことを」
   ―——旧貴族長剣(武器物語)

モンド成立当初、ロレンス一族の主母ヴァニーラーレは人々を率い、
神の奇跡を称えるため、広場に巨大な神の石像を作らせた
神像の下に刻まれている銘文は、昔各集落のリーダーがモンドを永遠に護ると誓った誓約の言葉である。
しかし、時の流れにつれ、ロレンス一族は先代の願いに背き、神像も倒された。
賢明な宮廷の魔法使いたちも、その歴史と誓約をなかったことにした。
   ―——旧貴族の秘法録

当時のモンドはなんと奴隷制度がまかり通っていたんだよ。この自由の都にだよ。そして、貴族たちは闘技場を建築しそこで奴隷の命を弄んでいたんだ。

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「原神セレベンツ」プロローグ15P

しかし彼らに反抗しようにも当時のモンドの外は魔龍ウルサという邪龍が人々を脅かしていて、それに対抗する力を持つのはローレンス家だけだった。

かつて流浪楽団と呼ばれた集団がモンド貴族たちに反抗した。
当時のモンドは唄さえ禁止されていて、そのため彼らは笛を剣に、琴を弓に持ち替えて最後は貴族の城にまで攻め入ったけれど、最終的には負けてしまった。

彼らはみな処刑され、逃亡し、奴隷に落とされてしまったんだ。

流浪楽団は旧貴族時代に結成され、
希望、或いは恐怖の心を持つ人々は彼らを剣楽団と呼んだ。
当時のモンドは、唄さえ許されなかった。
彼らは剣を笛の代わりに、弓を琴の代わりに、反乱の響を奏でた。
最後は城内に攻め込み、暴虐な貴族に天誅を下そうと試みた。
剣楽団は既になくなり、彼らの反逆も人々に忘れられた。
   ―——流浪楽章(武器物語)

今のアカツキワイナリー、ディルックの先祖である「暁の騎士」ラグヴィンドは、当時は一人の主に仕える侍従騎士に過ぎなかったんだけれど、彼は主に連れられ、ある日奴隷であった女性と出会った。

彼女は元流浪楽団の踊り子であり卓越した剣士でもあったんだ。

流浪楽団に颯爽とした剣士がいた。
水面に映る霞光よりも清らかで美しかった。夜明けを知らせる雀のように優雅であった。
彼女が剣を振るうたびに、笛の音と歌は風と共に舞い上がる。
   ―——楽団の朝の光(聖遺物物語)

だけど、彼女もまた反乱に失敗した一員であり、今では剣闘士奴隷に過ぎない。
しかし、それでもなお彼女は気高さを失わず、己の歌と光を剣に乗せて朗々と響かせた。その姿を見たラグウィンドは感銘を受け、貴族へ反抗することを決意したんだ。

ある日、朝日の下、
剣を歌にする舞子がモンドを訪ねる
(中略)
「なぜ彼らは高い壁を作らせる?」
彼女の声はそよ風の息吹を帯びる。
「自分を風の友だと思うなら、
自分がかつて自由を持っていたなら」
彼女は孤独の傾聴者に過去を語る、
神の力を持つ貴族の先祖の話、
かつての天使、神々と悪龍の話、
全ての国土の神とその民の話、
彼女はあらゆる伝説を歌に紡ぐ、
その歌は風に乗って全土に伝わった。
   ―——書籍:侍従騎士の歌2巻

流浪楽団に凛とした剣舞者がいた。
楽団による旧貴族の討伐計画が失敗し、彼女は奴隷戦士になってしまった。
たとえ希望を失い、全ての仲間を無くしても、戦う時は、彼女の剣は光の唄を歌う。彼女は「夜明けの光剣士」と呼ばれた。
*暁の騎士のラグヴィンドはかつて侍従騎士であった。
剣闘士の戦いに同行した際、彼は彼女の剣舞に感銘したという。
そのため、彼は自分の騎士名とやるべきことを決めた……
   ―——笛の剣(武器物語)
 *日本語では「ラグヴィンドは彼女の元お付きの騎士で共に行動した」という記載になっているが誤訳であるため、原語に近い文章で意訳している。

先祖の誓いを思い出した彼は、敗北した彼女の剣を持ち出して穏やかな風の地に埋めたという。

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埋めた場所は不明だが、風龍廃墟の一角が候補地とされる

そんな中、風神バルバトスは再びモンドに降臨したんだ。その時もライアーが好きな‥‥とある少年の姿を借りてね。

そしてモンドの現状を知ったバルバトスは、奴隷戦士であったヴァネッサと出会ったんだ。
彼女は、元々火の神の民でムラタ族と呼ばれる民族だったんだけど、一族は放浪の末にモンドに辿り着いたんだ。だけど、そこで魔龍ウルサに遭遇して城に逃げ込んだところを貴族に捕まり奴隷にされてしまった。

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「原神セレベンツ」プロローグ42P

彼女は、強靭な肉体と力を持っていて鎖は無意味だったけれど、それ以上の「一族」という鎖が彼女の精神を縛っていた

ヴァネッサは手錠や鎖で束縛されたわけではない。彼女が抵抗しようとするなら、いつでもモンドの金属をバラバラにすることができる。なにせここには優れた鉱石も、故郷の神火もないから。
彼女を縛ったのは、一族を守りたい責任であった。
   ―——獅牙戦士の手錠(武器突破素材)

だからこそバルバトスは彼女に協力して人々を解放しようと決めたんだ。

「ボクと友達になろうよ」

バルバトスの正体を知らないヴァネッサはにこやかに笑う彼の手を握り、二人は友情を誓った。

モンドの酒を愛す友よ、飲め、騒げ
ついにバルバトスは、この熱き祈りに応えた
少女の赤い髪を追いかけ、風神は牢獄に降臨した
「万物に名前あり」いたずら好きの彼の者はそう言った、
「君の名で詩を作りたい、」
「報酬の代わりに、君と友情を結ぼう」
少女は快く応じた。心は解放の兆しに満ち溢れていた。
   ―——書籍:ヴァネッサの物語2巻

暴虐な貴族たちの支配もいつかは終わりを迎える日が来る。

その日、モンドには再び魔龍ウルサが襲来してきていた。

そして貴族たちはいつも通りに魔龍ウルサに対して餌——ヴァネッサたちを差し出したんだ。
ローレンス家が魔龍を制御できると嘯いていたのは、こうやって定期的に生贄を捧げていたからなんだよ。

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「原神セレベンツ」プロローグ56P

魔龍に勝てる人間などおらず、その日もいつも通りに魔龍は餌を平らげて、満腹して帰っていくはずだった。

だけど、その日はいつものと違った。何故ならヴァネッサのそばには風神バルバトスが友としていたからだよ。

彼の加護を受けたヴァネッサは見事に魔龍ウルサを仕留めることができた。

モンドは魔龍の恐怖から解放され、英雄として崇められたヴァネッサは腐敗した貴族に対して反乱を起こした。

この反乱にラグヴィンドや流浪楽団の残党も参戦する。モンドに自由の風が再び吹き上がったんだ。
前の反乱は失敗に終わったけれど風神の加護を持つ今回は反乱軍が勝利。
ローレンス家は転覆した。
だから、彼らは今では旧貴族と呼ばれているんだ。

流浪楽団と共に行動する反逆者の名はクロイツリード。かつてはロレンスー族の一人だった。
この時代、学者と詩人は歴史を語らず、旧貴族は自らの堕落に気づかなかった。
そのため、クロイツリードが剣を振るった時、旧貴族は恐れ慄いた。
反乱は失敗に終わったが、彼の処分内容は不明である。ある意味、彼の血統が証明されたのかもしれない。
爵位を剥奪された後、彼は亡き同士の志を受け継ぎ、貴族政権の転覆を目的とする秘密結社を作り上げた。
そして、遥か西方から訪れた異民族の戦士が起こした反乱に協力することになる。
   ―——鐘の剣(武器物語)

ちなみに、このクロイツリードの組織は500年後も存続していて、「幼い狼」の異名を持つルースタンも所属していたと言われているね。

勝利したヴァネッサはモンドの治安を守るための「|西風《セフィロス》騎士団」を設立させ、初代|蒲公英《ダンデライオン》騎士と称えら、人々の生活に安寧を与えた。これが今でも続く西風騎士団のルーツなのさ。

今のジン団長が使っている執務室も、ヴァネッサが忙しく使っていたところなんだよ。

そんな中、バルバトスが呑気に訪ねてもそりゃ追い出されちゃうだろうけど、友人に対して失礼ぷんぷんだよね。

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このとき、ちょうどかつてデカラビアンと相対した魔神アンドレアスの魂の残滓が奔狼領に訪れてきていたので、宥めたり最初の眷属であるトワリンに挨拶をしに行ったりと色々活動していたんだけど、最後はモンド人に全てを任せて風神は再び眠りについたんだ。

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あ、ローレンス家に関しては、噂によると今でも貴族として復権しようとモンドの裏で何か良からぬことを企んでいるらしいよ。
そんなのほおっておいて大丈夫なのかって?きっと大丈夫だよ。ローレンス家でもその人格と力だ認められて、西風騎士団入りした者がいるんだ。

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きっと彼女が仲間とともに中から変えてくれると思っているよ。

ちなみに、今僕たちがいるこの風立ちの地はヴァネッサが最後に訪れた地なんだよ。

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彼女は一株の苗を植えて、天空の島に登った。
そう、この神木の始まりは1000年前にヴァネッサが植えた小さな苗が全ての始まりだったんだ。
だから、僕はこの場所が好きなんだよ。

風立ちの地にある神木は、初代「蒲公英騎士」の終点である。
記載によると、ここは西風騎士団を作り、モンドを再建した初代蒲公英騎士・ヴァネッサが人生の最後に訪れた地だ。
彼女は風立ちの地で自分自身が守ってきた城と別れを告げ、自身の物語と一株の苗だけ残した。
この苗は千風の加護の下、太陽と月に照らされ、天に届く巨木になった。
   ―——ジン・キャラストーリー4

「古国の災禍」と「無邪気な毒龍」(500年前)

自由を愛するバルバトスはモンドを統治したりはしない。

だけど彼はモンドを愛しており、民を守るために目覚めることを辞さないんだよ。偉いでしょ。えっへん。

さて、バルバトスの次の目覚めはモンドを最悪の災厄が襲い掛かってきた時なんだ。

遥か遠方にある今では滅んでしまった国カーンルイアに天からの災禍が降臨した。
そして、その結果生まれた魔物がモンドに襲来したんだ。

それはもう尋常な数じゃなかった。もちろん騎士団が戦い続けたけど悲劇は止められなかった。

そして、それだけじゃないんだ。近づくだけで瘴気と毒を巻き散らす、この世界外から生まれた存在——毒の邪龍ドゥリンがモンドを襲来したんだ。

古国に降臨した災いの戦火はこの地にまで及んだ。
風が運ぶ喜びの詩は、毒龍の咆哮や、
大地を揺らす魔物の足音、そして啼き声と烈火に飲み込まれた。
王位継承を望まぬ風神は慟哭に気づいた。
旧き友の夢を守るため、風に恵まれた緑の野原を守るため、
風神は長い眠りから目覚め、天空の紺碧の龍と共に戦った
そして、騎士と騎士団も自分たちの国と故郷のために戦った。
   ―——終焉を嘆く詩(武器物語)

民の嘆きにより目覚めたバルバトスは眷属である風龍トワリンとともに、この毒龍に立ち向かった。

そして、その時にバルバトスは気が付いたんだよ。

ああ、なんていうことだろう——この恐るべき毒の龍はただの無邪気な赤子なんだって。
ただ、僕たちと遊びたいだけなんだと。

これは、ドゥリンと呼ばれる子供の、「母親」に関する記憶…
「お母さん、ありがとう」
「空を飛ぶ翼と、丈夫な体、全部お母さんがくれたもの」
「僕は、美しい歌声がある場所に行きたい」
「皆のことや、お母さんのこと」
僕の生まれたところが、どんなに美しいか。全部、彼らに伝えたい
   ―——腐植の剣(武器物語)

ドゥリンの血は、この世界の人間にとっては猛毒の塊だ。

だけど、それは本当の意味での毒なんじゃない。ドゥリンは存在そのものが僕たちの世界とは全く違うものだったんだよ。

だからドゥリンが近づくだけで僕たちは世界の反発を受けて腐食してしまう。これがドゥリンの毒の正体なんだ。
どれほどドゥリンが健気で無邪気でも・・・絶対に僕たちが分かり合うことはできないんだよ。

カーンルイアが破滅した時代、ある罪人が無数の魔獣を作り出した。それらにはこの世とは相容れない黒い血が流れており、この大陸の生き物を踏みつけ、あらゆるものを破壊する。その命は変質的で、世界外の力によって与えられたものである。しいていえば、モンドを襲った「ドゥリン」も同じ類である。
   ―——漆黒の隕鉄の塊(武器突破素材)

激しい戦いの末、最後にはトワリンの牙がドゥリンを貫き、毒龍はドラゴンスパインの寒天の雪山に墜落した。

バルバトスは死してもなおドゥリンの死骸が周囲に悪影響を及ぼすことを予測して、この雪山を決戦の場所に選んだんだ。毒を封印するためにね。

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だけど、毒龍との戦いはバルバトスにとってもトワリンにとっても容易なものじゃなかった。

トワリンは毒血に腐食を受けて汚染され、バルバトスもまた永い眠りにつくことを余儀なくされてしまったんだ・・・。

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そして現代へ

そして、モンドの歴史は今に至るんだよ。

もうこのモンドにはバルバトスはとっくにいなくなっている。

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僕が思うに・・・自由を愛する風神は、「自由であれ」とすら命令したくなかったんだよ。神に命じられた「自由」は、ある意味「不自由」だからね。

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さて、僕の語る物語はこれでおしまいだ。

モンドを揺るがせた風魔龍事件に関しては、きっと君たちの方が詳しいだろう。

四風守護の一柱であった東風のトワリンはドゥリンの毒血で苦しんでいたところをアビス教団につけこまれてしまった。

だけど、異世界からの旅人——栄誉騎士が、トワリンの毒を浄化して彼を救ってくれたんだ。

きっとバルバトスは遠いところで彼に深く深く感謝しているだろうね。

その他考察

・ウェンティの「力」の弱さ

七神の一人でありながら、ウェンティはファトゥス執行官「淑女」にもタイマンで力を奪われてしまう程度の力しかありません。

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これに関しては、元々七神は「人々を統治することで力とする」というルールがあるのですが、統治を拒んだウェンティはモラクスやバアルと違い、長い時の末に最早ほとんど「神の力」は残っていないのでしょう。

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また、モンドの人々はバルバトスを信仰してはいますが、同時にもうウェンティ自身が言うようにバルバトスは既にモンドから去っていると思っています。
よって彼らが祈っているのはあくまでも偶像であり、ウェンティに対するものではないのもその要因でしょう。

・「魈」の業障と治癒
璃月の少年仙人である魈は璃月の平和のために魔神の怨念と戦う日々を送っていました。
しかし、魔神の怨念と戦うことはその身が魔神に蝕まれることに等しく、いつかは怨念に蝕まれてしまいます。
そのことを「業障」と言い、幾人もの仙人がそうして散っていったのですが、魈自身も過去に業障に囚われたことがあったのです。

それを救ったのが謎の笛の音——ウェンティの奏でる音楽でした。

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魈のストーリーPVには、璃月で笛を奏でるウェンティの後ろ姿が描写されています。

天空のライアーがトワリンの毒を浄化したように、ウェンティの奏でる音には治癒の力があるのでしょう。

魈自身も自分を救ってくれたのがウェンティだと感づいていますが、深く追及することはしていません。

疲れ果てた魈は、その身を蝕む魔神の怨念により発作を起こす寸前であった。
奥底から無限に湧き上がる憎しみが魈を絡めとり、それに抵抗するたびに、さらに激烈な苦痛が彼に襲い掛かるのだ。やがて、魈は苦痛のあまり荻花の茂みに倒れた。
しかし、なぜか魈を苦しめる痛みが突如消える。
魈自身が邪念を抑えたのではない、謎の笛の音が彼を苦痛から解放し、救ったのだ。
(中略)
助けてくれたのは誰なのか?魈は気になったが、深く追及することをやめた。何故なら、彼の心には漠然とした心当たりがあったからだ。
かつて、彼を助けた力を持った者、それは俗世に君臨した七柱の神の一人だった。そして、今回もおそらく――
   ―——魈・キャラストーリー5

ウェンティ… ?なるほど、ウェンティと⾔うのだな。彼の奏でる曲は… いや、なんでもない。
   ―——魈・ウェンティについて

・「ウェンティ」という名について
既に実装されている三神の間では、鍾離は「モラクスについて」、雷電眞と雷電影は「バアルについて」と魔神名で語られているにも関わらず、ウェンティに関しては「バルバトス」ではなく「ウェンティについて」となっています。

これに関しては、鍾離と雷電に関しては魔神名が本名だからでしょう。

さて「ウェンティ」とは、かつてのライアーを持った少年の名のことです。

バルバトスは人間の世界が好きで、「ウェンティ」の姿でモンドを気ままに歩くのが好きだった。
   ―——ウェンティ「神の目」

しかし、かといってバルバトスが本名というわけでもありません。
千風の精霊が神に昇格した特殊な存在である彼はそもそも名前がなかったのでしょう。
そして、彼は基本的にバルバトスであることを拒否しています(でも都合のいい時は使う。自由なので)。

彼が「ウェンティ」を名乗り、それを良しとしている限りウェンティの本名は「ウェンティ」なのでしょう。

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