この記事は、資料を基に行った考察を個人的に物語として創作したものになります。
前回のあらすじ
モンドの南方に位置する極寒の地、ドラゴンスパイン。
1000年前、この地にエバハート率いるモンド貴族による考察隊がこの地に調査に訪れた。
しかし、調査とは表向きのこと。真の計画は、エバハートにより一族の皆殺し計画だった‥‥。
だが、アルベドはこの計画の「真の目的」に心当たりがあるのだという。
それは一体なんなのだろうか‥‥。

*本記事は「解答編」であり、「出題編」の続きになります。
未読の方は先にこちらをお読みください。


パイモン「アルベド!気になるからいい加減答えを教えてくれよな」
▷ 俺も気になる。
アルベド「ふむ。まず、このエバハートはどういう人物だと思う?」
▷ 色んな人をこの雪山で殺した……。
パイモン「悪いやつだ!人殺しはいけないことなんだぞ」
アルベド「確かに、どんな理由があろうとボクも殺人自体を肯定する気はない。だけど、この話はもう1000年も前の話なんだ。だから、善悪はともかくとしてこの事件がどういうものかを考えることは別に構わないんじゃないかな」
パイモン「大昔の話と言われたらそうだけど……でもエバハートは家督を継ぎたくて身内を殺しまくったんじゃないか。普通に悪い男だと思うぞ」
▷ パイモン、この事件もしかして……。
アルベド「それでは、このエバハートの一族は貴族の中のどういう家系だと思う?」
パイモン「家系?貴族の家系といえば、ジンのグンヒルド家やディルックのラグヴィンド家とかがあるよな。さっきお前が教えてくれたじゃないか。」
パイモン「でも、この日誌や記録には家系の名前が出てないから分からないよな……」
▷ ローレンス家だと思う
パイモン「え、そうなのか空!なんで分かるんだ?」
アルベド「うん、ボクもローレンス家だと思うよ。パイモン。彼が使っていた槍のことを思い出してごらん。」
パイモン「槍……確か……旧貴族猟槍だったよな。」
パイモン「あ!ローレンス家って没落したから旧貴族って呼ばれてるんだっけ!」
アルベド「その通り。そして名前だけではないんだよ。この槍は一族の家紋を刻んだと説明されているね。そして、この刻まれた家紋はローレンス家のものなんだ。旧貴族という名前と刻まれた家紋……つまりこの槍の持ち主エバハートがローレンス家であることを示している」
言い伝えによると、かつて貴族の血筋を持つ青年は、
探し当てた職人に、一族の美しい家紋が彫られた鋭い武器を作らせた。
———旧貴族猟槍(武器物語)

▷ 「形が大事」というのは家紋のことだったんだね。
パイモン「なるほど、このエバハートの一族はローレンス家……。理解したぞ」
アルベド「そして、ローレンス家であるとすれば彼の行った行為には別の視点が見えてくるんだ。そもそもローレンス家とはどういう貴族だったんだ?」
▷ 権力を握って人を奴隷にしていた……。
アルベド「そうなんだ。簡単に言えばこのローレンス家は『とても悪い人たち』だね。そして若かりし頃のエバハートは『貴族の栄光の復興』を夢見ていた。でも当時のローレンス家は、権力の頂点であり、既に栄光は輝いていた。とすれば、この『エバハートの考える貴族の栄光』は全く違った意味を持っていることになる。そして彼は更に腐った根をなんとかしたいと思っていた」
私生児であったエバハートは幼い頃から貴族の栄光を復興することを目指した。
しかし、腐った根を揺るがすには強い力が必要だった。それなら——
———西風長槍(武器物語)
パイモン「ローレンス家の人は今のモンドでも評判が悪いもんな」
アルベド「さらに彼はこう言った。力を得られれば現状を変えることができる。これは、自身の現状のみならずローレンス家の現状を指し示していることも考えられるんじゃないかな」
▷ エバハートは権力に驕り高ぶったローレンス家の現状を変えたかった?
アルベド「ああ、彼の腹違いの兄パルジファルはエバハートの口車に乗って義賊——強盗ごっこにハマった。でも彼がそもそも義賊になりたがったのは彼の家に残された叙事詩が原因なんだよ。記録にはこうある。」
古い時代に書かれた先祖の徳政を記録した叙事詩は、貴族の少年の心に反逆の種を植えた。
機は熟した。名門出身の彼は一族を置き去りにし、長剣を盗み路地の奥へと姿を消した。
彼はあの日の出来事を思い出した。家を出る前、宝庫からこの長剣を盗み出し、家族に、過去と未来に、この土地に、腹違いの弟エバハートに誓った言葉
「ほんの少しでも、僕は僕自身の力でこの漆黒の世界を変えて見せる」
———ダークアレイの閃光(武器物語)
アルベド「この記録の中心人物は兄だが、兄はその徳政の内容を弟にも語っている。つまり弟エバハートも『本当に民に信頼され愛されていた貴族の栄光』があったことを知ったんだ。そして今はもはやそれが失われてしまったことも。彼が誅殺の道具に貴族に相応しくない長槍を敢えて選択したのも、虚飾に塗れた腐敗貴族を否定したかったのかもしれないね」
パイモン「エバハートは貴族の誇りを取り戻したかったのか……。でもそれなら何で彼がモンドに帰ってきた記録がないんだ?やっぱり死んじゃっていたのか」
アルベド「僕たちが最後に宝箱を得たときに『不忠の帰郷』というアチーブメントを見つけたのを覚えているかい?」
パイモン「冒険をしているとたまにもらえる不思議な記録のことだよな」

アルベド「そう、僕たちは地脈に残された不思議な記録を得ることができる。これは『忠義のないものが故郷に帰る』という意味だ。忠義のない者――エバハートは重傷を負いながらもモンドに逃げ帰ることができたとボクは見ている」
▷ それなら、なおさら記録がないことが不思議だ。
アルベド「それはこの時のモンドの情勢が影響しているとボクは考えている。この時モンドにはヴァネッサ様がいたんだ」
パイモン「確か、奴隷剣闘士としてだよな。」
アルベド「その通り。そして、彼女はある日貴族に反旗を翻して政権をひっくり返した。その結果ローレンス家は没落して人々は自由を取り戻したんだ。ヴァネッサ様は西風騎士団を設立して、新しいモンドが始まった」
▷ エバハートの行いは無意味だった?
アルベド「古い考察日誌にもあるように、彼はよほど間の悪い人物だったのかもしれない。彼が栄光を取り戻したかったローレンス家はもはや無くなったも同然になってしまったんだ。だから彼がモンドに戻る意味は失われてしまった」
▷ だから、モンドには戻らなかったのかも?
アルベド「二つの可能性をボクは考えている。一つはその通り、目的が果たせなくなったエバハートはモンドに戻らず逃走したというもの。もう一つの可能性として…….彼がヴァネッサ様に協力し西風騎士団の設立に関わっていた可能性もあると見ている」
パイモン「エバハートがか?」
アルベド「うん。最初の時に彼が使った記録のある槍は二つあると説明したね。一つはローレンス家の家紋が刻まれた旧貴族の猟槍。そして、もう一つが……。」
▷ 西風長槍……。
パイモン「西風って今のモンドを守る騎士団のことだよな」
アルベド「ああ。西風武器には我々西風騎士団に深い貢献のある人物の物語が刻まれている。例えば片手剣はルースタン。大剣はエレンドリン。秘典はラグヴィンドというようにね」
パイモン「 その西風武器の一つをエバハートが使っていた……」
アルベド「うん。これは仮説に過ぎないんだけど、モンドに戻ったエバハートはヴァネッサ様の反乱に出くわした。そして貴族の栄光の再建を望めなくなったけれど、腐った根を切り倒すことはできる。だけど愛人の子とはいえローレンス家である彼が大っぴらに出ていくことはできなかったんだ。だから、陰ながら西風騎士団に貢献した……。それが彼の戻った記録がない理由じゃないかな」
▷ 確か、兄の剣も……。
アルベド「そう、兄パルジファルの使っていた長剣は、現在の西風騎士団が使っている剣の原型なんだよ。」
真っ直ぐで高貴な長剣。夜の閃光に似ている。
その刀身は一度も血に触れたことがない。
噂によると、後世の人々はこの剣を元に高貴な騎士の剣を作ったという。
———ダークアレイの閃光(武器物語)

パイモン「本当だ!明らかに同じデザインを元に作られているじゃないか!でも‥‥どういうことなんだ?」
アルベド「兄の行動の原点は腐敗した貴族を正したいという気持ちから出ていた。それを評価する人々がいたんじゃないのかな」
ヴァネッサは腐った政権に止めを刺した。彼女は怒りを露わにし、その力を示した。
人々に密かに称賛される義賊や、生死の隙間を見る少女、あるいは暗殺を企てた剣楽団のように、モンドの人々には反抗の血が流れているのだ。
———旧貴族長弓(武器物語)
▷ 二人の行いは意図的に消されたのかも‥‥。
アルベド「モンドの人々のローレンス家への怒りは相当なものだからね。その可能性はあると思う。しかし、記録は消されたけれど、その行いは誰かが見て覚えていた。それが二つの西風武器として形で残されていたのかもしれないね」
パイモン「だいぶややこしい話だな……。でもエバハートは一応はそれで目的を達成したことになるのかな。空はどう思う?」

▷俺は納得した。
アルベド「ありがとう。だけどこれは現在の情報から推測できる仮説に過ぎない。何しろ1000年も前のことだからね。新しい証拠が出てきたら、すぐにひっくり返ってもおかしくないさ。」

▷うーん、納得できない。
「ああ。これはあくまでもボクが推測した仮説に過ぎない。何しろ1000年も前のことだからね。キミが納得できる説があるなら、キミにとってはそれが正しいよ。」

パイモン「でもエバハートが正義のためにやったことだとしても、それでもオイラは賛同できないな‥‥。悪いやつらだとしても殺すのは間違ってる!」
アルベド「彼の兄であるパルジファルも同じく正義に酔ってしまっていた。お互いに間違いを止めることができなかったんだ。」
▷ 俺が間違えそうになってもパイモンが止めてくれる。
パイモン「当たり前だろ!なにしろオイラたちは、最高の相棒だからな!」
アルベド「二人の関係は羨ましいね。」
アルベド「いつか……ボクが間違えそうになったら、その時はキミが止めてくれるかい?」
▷ どういうこと?
アルベド「いや、なんでもないさ。何か新しい冒険があればボクもまた誘って欲しい。約束だよ」
白亜の章 第1.5幕 〜終幕〜
その他の考察
・剣闘士のフィナーレ
聖遺物「剣闘士のフィナーレ」のシリーズでは、百戦百勝の伝説の奴隷剣闘士が、最後は無名の少女に敗れて散っていく様が描写されていますが、ここに出てくる主とはエバハートのことではないかと言われています。
それは剣闘士の最後の戦いで、相手は新人の少女であった。
彼女の目に、彼は怯えを感じた。幼い獅子のような凶暴な目つきを感じた。
そして彼女は、彼の歩き方から、時の流れという重い鎖に縛られる苦しみを感じた。
戦闘は激しかった。歳を取った勇者は若返ったように戦いを楽しんでいた。
だが冷たい刃が心臓を刺した時、砂時計の砂も何もかも無音のまま決着が、ついた。
———剣闘士の希望(聖遺物物語)剣闘士がまだ伝説になっていなかった時、幼い主と荘園を歩いていた。
昔、主がついでに一輪の小花を採って、無言の奴隷に送った。
「恩賜は報酬とは限らない。ただの気まぐれかもしれない」
数年後に、狡猾な主は笑ってこう言った。
無敗の戦士は異国の少女に倒され、ふと思い出した。
数年前に自分も夢見ていた。
「美しい花だな。いつかまた見たい」
「野に咲く花はどんなものかな」
———剣闘士の未練(聖遺物物語)
この物語は固有名詞は出ていませんが、ドラゴンスパインに残された「古い考察日誌・2」の最後にはエバハートの奴隷剣士が赤髪の死神に倒されたことが書かれています。
魔物に勝っても、エバハート坊ちゃまの老僕のように、ロレンス家の赤髪の死神の剣に倒れるだろう…
———古い考察日誌・2
これと合わせて解釈することで、「狡猾な主」はエバハートで「異国の少女」はヴァネッサ(ナタ出身)ではないかと言われているわけですね。
・ルースの所属
この物語はローレンス家の陰謀に関わるものでしたが、考察日誌の作者であるルースは恐らくローレンス家ではありません。
ローレンス家の者を「旦那」「坊ちゃん」と呼び、ランドリッヒの歓心を買って「一族の名をあげたい」と言っていることを考えると、外様の貴族だったのでしょう。
(ローレンス家の)ランドリッヒの旦那の期待に答えたら(ルース家を)もっと有名にできるが失敗したら闘技場に放り込まれて、子飼いの剣闘士に始末されるという話ですね。
反乱軍「流浪楽団」に参加したローレンス一族のクロイツリードは命は助けられてるのに、登山の計画失敗すれば闘技場にいれられるなんて話が合わないので、身内にはとことん甘くて外部にはすさまじく冷淡なのがローレンス家の信条とすれば、ルースは外部の人間としか考えれません。
・兄パルジファルの行方
ドラゴンスパイン考察隊にパルジファルは含まれていないため、日誌内では描写が少ないのですが、その他の物語においてはパルジファルはかなり大きなストーリーの主役を務めています。
この件に関しては、文量が想定以上に多くなったため、彼の物語は別記事で公開する予定です。
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