お代はラヴでけっこう

【ダークソウル考察】輪の都はノアの箱舟であるというお話

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本記事には「ダークソウルシリーズ」に関する重大なネタバレがあります

 フィリアノールの目覚めについて

 ダークソウル3のDLC最終ステージである輪の都では、火のない灰が輪の都を進んでいき、最終的には王女フィリアノールの寝所に到着します。

 フィリアノールは半分割れ欠けた卵を抱き、眠りについています(寝息を立てるように軽く動いている)。

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 しかし、ここで火のない灰が卵に触れてしまうと、一瞬にして崩壊した輪の都ミイラと化したフィリアノールの前に飛ばされてしまうのです。

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光とともに目を開くと世界が崩壊している

 ここに至るまでにプレイヤーは王女の騎士シラから「王女を眠りから起こさないで」と散々言われるので、今までの輪の都は王女の夢の世界だったんだと思う流れになっています。

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くどい程念押ししてくる

 私も最初にプレイした時はそのように解釈していましたが、色々考えてみると、シラのセリフはミスリードであり、あの輪の都は夢の世界ではないことに気がついた。

 まず、第一に崩壊した輪の都に着いてからも篝火で元の輪の都に戻れるということ。

 フィリアノールは既に死んでいるのだから、あれがフィリアノールの夢だとしたら戻れてしまうのはおかしい。

 いやそれはゲーム的な都合でしょう。と思われるかもしれませんが、それはない。

 何故なら、崩壊した輪の都にはシラがプレイヤーの裏切りを制裁すべく待ち構えていますが、このシラを撃破すると元の輪の都の聖堂の扉が開き、中にシラ装備が残されているからです。

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フィリアノールの目覚め後にも「元の輪の都」には変化が生じている

 もし仮に元の輪の都が夢の世界であり、ゲーム的な都合でワープ前に「固定」されているとしたら、「固定後」に変化が起きるのはおかしい。

 それに崩壊した輪の都のフィリアノールは完全にミイラ化しており、元から夢が見れるという状態ではなかったと思われます。

 つまり、この二つの理由によりあの世界は夢の世界ではありえない。

ソウル錬成された輪の都

 さて、ではあの輪の都が何なのかというと、これに関しては既にソウルの種さんが詳しく解説をしてくれていますが、あの世界はフィリアノールのソウルから錬成された輪の都であるというのが正解でしょう。

フィリアノールのソウルが得られないのは、それがすでに利用されているからであり、何に使われたかというと彼女が自分で抱いている錬成炉によってソウル錬成されたのである
ソウル錬成によって生まれたのが「輪の都市」と呼ばれる場所であり、この場所は「現実に実在する場所」でありながら、「かりそめの場所」でもある。
ソウルを使われた以上彼女は「死んで」いるのが必然であり、ソウルによって生み出された都市は、ソウル錬成によって生み出された武器と同様に、ソウルの主が死んでも残るものなのである

 ゲーム上では分からないのですが、フィリアノールの抱える「卵」はデザインワークスで「錬成炉」であることが分かるようになっています。

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「卵」には結晶トカゲの抜け殻が貼りつけられている

「輪の都」は「ノアの箱舟」である

 さて、ではなぜ錬成された輪の都を作る必要があったのか

 まず、輪の都は宮崎氏の発言により「さらに未来」の「火が陰り切った時代」であるとされています。

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電撃PlayStation Vol.636掲載のインタビューより

 3の時代においても既に火継ぎが限界であったことが示唆されている通り、もはや世界はどうにもならない状態になっていたのでしょう。

 法官アルゴーの「深淵は未だ深い」と言うセリフから分かる通り、あの世界は既に火はほとんど絶えてしまい、深淵に蝕まれてしまっています。

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 しかし、そのような中にあっても「複製された輪の都」は文明が残っており、完全崩壊した「現実の輪の都」との差は歴然です。

 そして、世界から火が消えてもやがてまた新たな火が灯ることも示唆されています。

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 グウィンは非常に用意周到で火を絶やさないために様々な策謀を張り巡らせていましたが、それと同時にもしも火が絶えてしまったときに、次の世界が生まれるまで「旧世界」を保っておくためのノアの箱舟として用意していたのがあの輪の都なわけですね。

 何故なら、現実のシェルターが完全ではないようにあの輪の都も完全ではなかったからです。
途方もない年月の中で深淵が染み込み都を腐らせてしまっていた。

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最下層の沼は深淵が染み出している

 また輪の都には闇霊「忌み探し」や「呻きの騎士」が現れるが、彼は名前を失ったアルバとイーゴンですね。
名前は「火によって現れるもの、火が失われ消え去るもの」の典型であり、火のない灰が訪れた時点で既にもう内部においても深淵の浸食が押し留まれない状態だったわけです。 

 よって火のない灰の介入は崩壊を速めただけであり、いずれあの輪の都は深淵に飲み込まれていったでしょう。

 ちなみに輪の都に入るとすぐに「小人の王」と同じ姿をしたNPCがおり、彼によるとここは「神共の糞溜め」らしい。

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 既に世界が深淵に落ちて、やがて新しい世界が生まれるのを待っているこの時に、古い神たちの世界が未だにしつこく残滓を残そうとする。
まさしく彼にとって、ここは神共の糞溜めでしょう。

いつ輪の都は複製されたのか

 輪の都が複製されたのかは諸説あると思いますが、個人的には深淵のマヌスの出現がきっかけだったと思います。

 フィリアノールの眠りを守る教会の槍ハーフライトはウーラシール出身です。

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ウーラシールは「古い魔術の国」という言い回しされている

 ハーフライトはウーラシールの使節団の一員として輪の都を訪問したのですが、ただ一人そこに残り教会の槍になることを選びました。

 そして、おそらくその時はまだフィリアノールは眠っていなかったと思われます。

 かなり大きく解釈しますが、ハーフライトが輪の都に残ったのはフィリアノールへの恋慕からでしょうから。

 ハーフライトは教会の槍になるまで碌に武器も持ったこともないような平民です。

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 そんな彼が故郷を捨ててまでたった一人残るということは相当な覚悟が必要だったわけで、考えられる理由としてはそれぐらいかなと。

 そして平服の説明に書かれた、彼が記録上最後の教会の槍になったとされています。
つまりそれから間もなく輪の都が複製され閉じられたことを意味しています
(「記録上最後」というのは火のない灰が教会の槍になれるからだと思われる)。

  グウィンは既に去った中で、四騎士筆頭のアルトリウスがマヌス破れたということは、必然的に「火の世界の終わり」を意味します。

 なのでフィリアノールはここで輪の都を複製しなければならなかったのです。

 結果的にある一人の不死人により深淵はマヌスの脅威は退けられましたが、それはあくまで結果論ですから。

 さて、輪の都がここで錬成されましたが、もう一つ必要なものがあります。

 それが「目覚めの鍵」です。新たに火が生まれ新世界が到来したときに複製された輪の都を外に出す必要があるからです。

 その鍵は当然普通に触れるものであってはいけませんし、厳重なセキュリティが必要になります。

 その結果考え出されたのがフィリアノールという偶像とそれを守る教会の槍なのです。

 しかし火のない灰の介入(人の渇望)により、この世界は現実と繋がってしまいました。
シェルターの扉は破られ、この輪の都もまた深淵に飲まれていき全ての残滓が消え失せていくでしょう

 神の世界。
「ダークソウルシリーズ」の世界はここに終わる。

 しかし奴隷騎士ゲールの血により、画家による火によらない新しい世界がこれから描かれるのだ。

余談

  輪の都は1作目から構想だけはあったと宮崎氏から語られています。

 その舞台としての“輪の都”ですが、これも初代のころから、ぼんやりとは思い描いていた場所ですね。いざ作ってみると、もっと掘り下げる余地がありそうで、少し後悔しています。

  たまに、このインタビュー回答が拡大解釈されて「輪の都は無印のころからあったけど没になった」みたいなコメントをする人がいますが誤りです。

 この構想とは、「ノアの箱舟」的なものをぼんやりと考えていたぐらいなんじゃないかなとか思ってます(個人の感想です)

余談2:ノアの箱舟と「天使のたまご」

 なぜ、私が輪の都を「ノアの箱舟」だと感じたのかというと、押井守監督作のOVA「天使のたまご」の存在を知ったからです。

 作品外で関連付けられるのを嫌う人も多いと思うので、まあこの辺は与太話に近いものだと思ってくれたらいいのですが、「フィリアノールの卵」は「たまご」に非常によく似ています。

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 天使のたまごとは、「たまごを抱えた少女」「いずこともなく現れた少年」を描いたキリスト教の影響を色濃く得た宗教色の強い映画で、最終的には少年にたまごを割られた少女は悲鳴を上げて死んで終わります。

 「少女」がフィリアノールで「少年」が火のない灰だとしたら余りにもしっくりきませんか。

 そして、この作品は「ノアの箱舟が陸地を見つけられなかった世界」が舞台となっています。

 作品の最後に「転覆したノアの箱舟」が描写されますが、陸地が見つかるまで箱舟は耐えることができなかった。

 輪の都も気の遠くなるほど長い年月をかけても、「新しい火」が生まれるまで持ちこたえることができなかったのをリンクさせているのかなと。

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