お代はラヴでけっこう

【原神考察】プレイヤーの9割が知らない「義賊パルジファル」のストーリーが深すぎて凄いというお話

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*この考察は、2021年10月時点の情報を元にネタバレや個人の見解、を含んでいます。今後の実装次第で公式と大きく異なる考察となる可能性がありますのでご了承ください。

今回は、過去のモンドの騒がせた怪盗パルジファルのストーリーの説明をしていきます。

でも、ほとんどの人は「え?パルジファル?誰それ?」ってなりますよね。
パルジファルは1000年前の人物で、ストーリーや任務のテキストでその名前が出る場所は一つもありません。

唯一、ドラゴンスパインの任務「雪に覆われた国」で手に入る「古い考察日誌」の中に一か所だけ名前が出てくるぐらいです。

結局、隠し子は隠し子。
「長槍」という貴族らしくない武器を練習したのも、邪魔者を排除し自分が一族の座につくためだったのか。
そう考えると、パルジファル坊ちゃまが「強盗」ゲームにはまったのも、彼の影響なのだろう…
彼がエンゲルベルトの旦那に長槍を突き立てた光景が忘れられない。
   ——古い考察日誌・3

篝火文書を愛読している人は、ドラゴンスパインの記事で名前を見た人もいるかもしれませんが、通常のプレイヤーでパルジファルを知っている人などほとんどいないでしょう‥‥。

では、なぜそんなマイナーを極めた男の話をするのかというと、そんな立ち位置であるにも関わらず、裏設定が異様に膨大で複雑に物語が絡み合っているからです。

恐らくは今後もメインに絡んでくることはほとんどなさそうな過去の1キャラに、ここまで設定を練りこんでくる原神運営の本気さと、原神の全てを記録に残してやるという篝火文書の本気さを証明するために1本の記事にまとめました。

なお、この記事は上記に「ドラゴンスパイン殺人事件」の解答編の内容にも一部触れているため。未読の方はそちらの通読を先にお勧めします。

名称未設定 1

貴族の栄光と堕落——「義賊」の誕生

およそ1000年の昔の話。

当時のモンドでは、かつて自由の神バルバトスに仕え忠誠を誓った貴族であるローレンス家が権力を握っていました。

そのローレンス家の一員だったのがパルジファルです。

彼は幼い頃に自分の先祖が徳により称えられる叙事詩を読み、その「貴族の栄光の姿」に憧れました。
しかし、彼の所属するローレンス家は権力を傘に来た暴虐な振る舞いで民衆から憎まれていました。

そこで、彼はこの自分の家柄を疎い、義賊となることを選んだのです。
自宅から貴族の剣盗んだパルジファルはその武器を貴族に対する脅しの道具として使い、夜の街を暗躍します。

古い時代に書かれた先祖の徳政を記録した叙事詩は、貴族の少年の心に反逆の種を植えた。機は熟した。名門出身の彼は一族を置き去りにし、長剣を盗み路地の奥へと姿を消した。
彼は平民と同じように酒場に行き、貴族から教わった剣術で富者から財物を奪って貧者に施した。
(中略)
家族に、過去と未来に、この土地に、腹違いの弟エバハートに誓った言葉
「ほんの少しでも、僕は僕自身の力でこの漆黒の世界を変えて見せる」
   ——ダークアレイの閃光(武器物語)

「魔女」との出会い

貴族から盗み、貧しい人に施す。その生活を繰り返していたパルジファルは路地裏で青眼の瞳を持つ少女と出会います。
「魔女」の異名を持つ槍使いの少女は、貴族に雇われてパルジファルを殺害しに来たのでした。
しかし、パルジファルは少女の瞳の美しさに囚われて一目惚れしてしまいます。
そして、彼女を自慢の唄で歓待しました。物語志向の強そうなパルジファルですので、最初に求婚までしてしまったのかもしれません。
少女もまた、パルジファルの情熱的な態度に絆され殺意をなくしてしまいます。
最後にパルジファルは「戦利品」である貴族の宝を彼女に譲り去っていきました。

彼は暗い時代に光をもたらすと、
迫害を受けた者に公平を、富と笑顔をもたらすと誓った。
彼は誓いを果たした。そして、貴族に恐怖と怒りをもたらした。
夜の路地。雨のような足音と、酒場や広場に居る詩人の歌声が響く。
鋭い長槍を持ち、賊を狩る碧眼の魔女に、貴族から奪った紺碧の水晶を渡した
   ——ダークアレイの狩人(武器物語)

しかし、この行為が二人のすれ違いと悲劇を生むことになりました。
パルジファルから渡された宝は所詮は盗品に過ぎません。家紋の入った宝を故買屋に売ろうとした彼女は犯罪者の一味であるとされ、その顔には罪人の刺青が施されてしまいます。

「この罪はあなたから被せられたもの、この屈辱はいつか必ず返させてもらう」
月明かりが青宝石の眼とまばゆいばかりの傷跡を照らす。
彼の記憶の中にある彼女の顔は、明るくて美しかった。
   ——浮沈の杯(聖遺物物語)

このようなことがあっても、少女——☆4鍛造武器「流月の針」の持ち主である魔女は、パルジファルのことを嫌いになれず、想いを続け、パルジファルは少女に罪を被せた引け目から想いを遂げることができません。
その隙をついたのがエバハートです。

エバハートは、旅人たちがドラゴンスパインに残された「古い考察日誌」にその名を残す人物で、彼はある計画のために一族を雪山に誘い込み殺害した人物で世界任務「雪に覆われた国」でその名が語られます。

 *「ある計画」——ドラゴンスパイン殺人事件参照

エバハートは計画を成し遂げるために、魔女と呼ばれた少女から槍の技術を学びます。
そして、兄と彼女が恋慕していたのも知っていたのでしょうか。自分の用事が済み不要になったためか、兄の心に止めを刺すためか、最後には彼女を殺害します。

噂によれば、この長槍を作った少女は、命を絶つ生死の隙間が見えるらしい。
生死の隙間は魔法のように、彼女の細長い槍先を吸い込む。
「万物は死を望むでしょう」と
生死の隙間を持たない少女はそう思っていた。
音楽によって彼女は愛を見つけた。愛によって彼女に生死の隙間が現れた。
最後、針に心臓を貫かれたような痛みがその人生の幕を下ろした時、彼女はようやく分かった。
「生死の隙間が現れるのは死を恐れるから。死を恐れるのは恋しい人や大切なものがあるから」
「ああ、もう一度会いたいな。あの捕まらない、殺せない賊に」
もう一度彼の唄を聴きたい。もし私が生き残れたら、絶対彼に……」
    ——流月の針(武器物語)

裏で槍使いの魔女の弟子になり、その技を身につけた後、魔女を殺しても
「後世に唾棄されても、目的を果たすためにどんな手を使っても構わない」 
   ——西風長槍(武器物語)

エバハートは殺害した彼女の処理に手を回し、行方不明という扱いにしました。

パルジファルは苦しみます。
自分の正義が愛するものを傷つけたこと。
彼女が死んだことを知ることができなかったため、行方をくらまして、会いに来なくなったのは自分を恨んでいるのではないかということ。
最終的に彼は、エバハートの口車に乗り故郷から逃走します。
最愛の女性の死も、それを成した人物が眼前にいることも知らぬままに……。

想いを寄せた冷たいサファイアのような魔女の笑顔を、最後まで目にすることはなかった。
そして、死を追う魔女の花のような顔には罪人の入れ墨が彫られ、やがて行方不明となった…
最後、義賊の男は弟に諭され、誓いを捨てて海に向かった――
「彼女はまだ俺の歌を覚えているだろうか。路地に漂う酒の匂いと彼女に贈った歌をまだ覚えているだろうか」
   ——ダークアレイの狩人(武器物語)

パルジファルは、義賊の証として使っていた貴族の剣を捨てることを決意します。
長く持ち続けるには、余りにも思い出が染み込み過ぎたからでしょうか‥‥。そして彼は船に乗り璃月に渡りました。

歌と酒と若い歳月はいずれ終わる。やがて色々なことが起こった。
最後は月光の下、長年共にしてきた長剣を埋葬し、船に乗って亡命した。
   ——ダークアレイの閃光(武器物語)

璃月での新たな生活——そして溺れる日々

代わりとなる☆4鍛造武器「鉄蜂の刺し」を佩いたパルジファルは、魔女が「屈辱は必ず返す」と告げて去っていったことを再開の約束であると心に刻み日々を過ごしていきました。

風の国の思い出を、遊侠としての失われた時間を、
故郷で出会った少女のことを、報われなかった恋を、そして再会の約束を思い出す。
   ——鉄蜂の刺し(武器物語)

しかしどれほど時間が経っても、既に死者となった少女が再び現れることなどあり得ません。
いつしかパルジファルは郷愁の想いに囚われ、酒に溺れる日々を過ごすようになっていきました。

そのような鬱屈とした日を過ごすパルジファルの前に一人の男が現れました。彼は璃月の海を荒らす「海獣」を倒すために命知らずの荒くれ者を探していました。

男は元々は璃月の軍船を指揮していた「船師」で、かつて璃月の海を荒らす海獣と戦い、船と仲間たちを失った過去がありました。
彼はその生涯を賭けて、敵討ちを誓ったのです。

渦潮を越え、稲妻と竜巻の中を進み、船は巨大な獣の海域に突入した。雷光を背に、恐れを知らない船師は大剣を振り上げる。
船師の視線を追い、船員達はようやく、雷光が映し出す影は雲ではなく、連なる山のごとく巨大な体であった事に気付いた。
城壁のような体に向かって、人の持てる全ての力をぶつける。船師の命令に従い、巨大な弓が次々と射られ、岩や話が海獣の体に痛々しい傷を残した。
冷酷な船師が敵を恐れる事はない。海獣の咆哮に、船首の少女は歌声で答える。波の流れに従って、船は海獣を中心に円を描く。鋭い牙と毒爪の攻撃に耐えながら、弓や話、投石、そして人の血肉から発せられる恐怖や怒りをも獣にぶつけた。
船師側も酷く消耗していた。帆柱と射撃台は破壊され、半数以上の船員は既に海獣の腹の中だ。船師の大剣も真っ二つに折られた。これは最初から負け戦だと決まっていた。幼子が巨人に挑むようなものだ。
重症を負った海獣は敵の士気が下がった事感じ取り、海面に浮き上がる。鋭い牙が並ぶ口を大きく開けると、既に動けない船を一飲みしたのだ。
海の巨獣は龍のような触手を、歌っている少女に向かって持ち上げる。スカートが引き裂かれても、彼女は船師に別れの歌を歌い続けていた。
そして少女は、海獣にゆっくりと漆黒の海に引きずり込まれた。
船師は見知らぬ商船の上で目覚めた。船と全ての船員を失った彼に残されたのは、満身創痍の体と、船歌が永久に響く深海の夢だけだ――
「海流が方向を示すとき、俺は海へ向かい彼女の敵を討つ、波に魅入られた者よ……」
   ——書籍:浮浪紀1〜3巻より抜粋

自暴自棄になっていたパルジファルは、「船師」の誘いに乗り、璃月の軍船に乗り込みます。

不真面目な航海士璃月の出身ではなく、灰色の国である貴族の出身だった。
かつては貴族だったと言われていたが、あることで一族に恥をかかせ、追放された
しかしそれも無稽な伝説である。彼が港に着いたとき、手にあったのは一本の細い剣*だけだった。
その後、彼は船師と共に海を渡り、嵐、海獣、そして波と戦った。
   ——追憶の風(聖遺物物語)
 *「鉄峰の刺し」のこと

船旅の中で、彼は酒に溺れながらも唄を歌い続けました
彼女への想いを……。過去への追悼を……。そして最早帰ることの叶わないモンドへの望郷を……。

副船長と船師を乗せた艨艟が再び出航した。
船師のばかげた望みのため、思い出に眠る故郷のために、
副船長は下手な鼻歌を口ずさんで鯨と波に応える。
「一族の名を捨てた賊人が命取りにきた魔女と流浪(できなかった)」
「一族の名を得られなかった弟はやがて族長となる(だろうか)」

「口に出せない歌詞…真実に背き、幻想を選んだのか」
「全てを失い全てを諦め、全てを受け入れ海に沈む」
「悪くない結末かもしれないな、ハハハハハハ!」
    ——金メッキのコサージュ(聖遺物物語)

長旅の末に彼らはついに「海獣」を見つけました。
命知らずの船員たちは、夢のため敵討ちのため全てを投げ打つために海獣に挑みます。

酒に溺れる副船長*は終日酔っぱらったままにいる。
その身に酒臭が染み込み、口からは千切れた記憶が囁かれていた。
だが船師はちっとも気にせず、ただ微笑む。依然として彼に重任を任せた。
「風もよし、海もよし。とうとう見つけた。」
「夢の中でさえ俺らを食いつく獣…」
今こそ敵討ちの時、帆を上げろ!」
   ——酒に漬けた帽子(聖遺物物語) 
  *
パルジファルのこと

海獣との再戦は熾烈を極めたと思われますが、その詳細は語られていません。何故ならその光景を目撃したであろう船員たちは皆全て海と海獣の腹の中に飲み込まれてしまったからです。

彼らは戻ることはできませんでしたが、同時に海獣の死体もまた陸に乗り上げました。彼らは仇を討ったのです。

結局、楽観的な船頭を乗せた船は帰らなかった
やがて、深海巨獣の死体が座礁した。
引き裂かれた傷口から白骨が露出し、血は海水に洗い流されている。
「海流と風向が重なる時、波の音に溺れていた彼女の復讐に出かける」
「海獣に喰われても構わない。それで彼女が眠る深海に、彼女の好きだった歌を届けられるなら」
   ——螭龍の剣(武器物語)

不吉な赤い羽根。死の兆候かもしれない。
ある日、海獣の残骸と共に海岸に打ち上げられた
   ——追憶の風(聖遺物物語)

パルジファルは酒に溺れ、全てがまるで夢の中のような日々を暮らしていましたが、その最期の時に忘れかけていた過去を全て思い出しました。

彼は船師と共に海を渡り、嵐、海獣、そして波と戦った。
かつて青宝石の色をした羽は、真っ赤な血で染められ、大海の塩気が染み込んでいた。
そして最期のとき、彼は強い酒に覆われていた過去をはっきりと思い出した。
波に流れる砂の下に現れた宝のように…
   ——追憶の風(聖遺物物語)

人生は終わる――そして物語が始まる

こうして、パルジファルの人生は終わりを告げました。

「船師」と「副船長」に倒された、海獣の脊髄から作られた剣は後世において☆4紀行武器「螭龍の剣」として受け継がれて行きます。

海獣の脊髄で作られた大剣。冷たい骨に様々な物語がある。
ようやく海流と風向の重なる時が来た。彼らを乗せた巨大船は出航した。
海霧の奥深くは暗流が激しく起伏し、海獣が出没する。
   ——螭龍の剣(武器物語)

パルジファルの使っていた義賊の剣——ダークアレイの閃光は、後世において西風騎士団の使う剣の原型となり、多くの人たちを守る剣となりました。

真っ直ぐで高貴な長剣。夜の閃光に似ている。
その刀身は一度も血に触れたことがない。
噂によると、後世の人々はこの剣を元に高貴な騎士の剣を作ったという。
   ——ダークアレイの閃光(武器物語)

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死の間際に全てのことを思い出したことが彼にとって本当によかったことなのかは最早誰にも分かりません。
ただ一つ言えることは、義賊と槍の魔女の逸話モンドでは人々の唄となり、璃月では書籍として出版され、人々に愛され長く語り継がれる物語となったということです。

ヴァネッサは腐った政権に止めを刺した。彼女は怒りを露わにし、その力を示した。
人々に密かに称賛される義賊や、生死の隙間を見る少女、あるいは暗殺を企てた剣楽団のように、モンドの人々には反抗の血が流れているのだ。
 ——旧貴族長弓(武器物語)

テイワット各国で流行っている幻想物語集。何もない骨董店で起きた物語が綴られている。
   ——砕夢奇珍・サファイア(書籍)
https://seesaawiki.jp/gnsn_txt/d/%BD%F1%C0%D2%A1%A7%BA%D5%CC%B4%B4%F1%C4%C1#

彼と魔女の物語は、璃月にある万文集舎の書棚に収められています。

璃月へお越しの旅人さんは是非お手に取ってみてはいかがでしょうか?

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