お代はラヴでけっこう

【原神考察】傷つき狼は少女と出会う――「淑女」の物語

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今回の記事には魔神任務第二章全般の多大なネタバレが含まれています。

ファトゥス執行官第八位「淑女」のシニョーラ。

彼女は魔神任務第二章第三幕の最終盤において、雷電将軍の「無想の一太刀」の前に散りました。

旅人と彼女の初めての出会いはモンドの風魔龍事件を解決した際に突如として現れ、ウェンティから「神の心」を強引に奪ったことです。

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次に璃月編においては、鍾離と氷の女皇の契約代理人として、神の心を譲り受けました。

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そして稲妻編においては天守閣で雷電将軍とともに旅人とまみえ、戦い――そして散りました。

その時にシニョーラの真実は、聖遺物「燃え盛る炎の魔女」において謳われた「炎の魔女」その人であったことが判明します。

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「炎の魔女」であった彼女がなぜ「氷の執行官」となったのか。

彼女はいったい何を求めていたのでしょうか?

話は500年以上過去に遡ります。

ある少年たちの話。「獅子」と「狼」の誓い

それは自由の国モンドの遠い遠い過去のお話。

ある日少年は泣き虫の友とともに、森の奥で冒険をしていました。目的は仙霊の導きに従い、千年の宝を探すため。

勇敢な少年は小さな弓で猪を追い払い、枝を剣に見立てて振り回します。臆病な友は夜の森を泣きながらついていきます。

それは他愛もない冒険譚。宝という名のただの黄色い花。だけどその冒険は二人の間に裂け難い友情を育みました。
冒険の証として少年が差し出した鳥の羽は臆病な友に勇気を与えます。

小さい勇者は夜に乗じて家を出て友と狼の森に入った。
小さい弾弓でイノシシを追い払い、硬い枝で仮想の亡霊と戦った。
光る仙霊に従って森の深くに入り込んで、千年を超えた宝を探した。
「宝」というのはただの黄色い花。
  ―——勇士の勲章

泣き虫の友を慰めるために、小さい勇者は飛鳥の羽を彼にくれた。
冒険の証や宝探しの成果として、友に勇気を与えた。
   ―——勇士の期待(聖遺物物語)

勇敢な少年は、騎士の一族。臆病な友は農民の子せがれ。
しかし臆病な友が勇気を持った時、ともに英雄を志す同志として結びつきました。

少年の名はエレンドリン。後の世に「光の獅子」と称えられる伝説の騎士。
友の名はルースタン。後の世に「幼き狼」と称えられる気高き騎士。

しかし少年たちはまだまだ幼い盛り。ちゃちな剣を持ち友とともにチャンバラ遊びに興じていたにすぎません。

幼いエレンドリンは北風騎士レイヴンウッドの剣の模造品を手に持ち、想像の中のモンド旧貴族へ突撃した。その時、まさか自分が将来、世界に名を轟かせるとは思ってもいなかった。
   ―——鉄影段平(武器物語)

それが後の世まで語り継がれる英雄譚の始まりだとは、この時はもちろん自分自身ですら想像していませんでした。

それから其の一人は「獅子」の名を負って、
騎士を率いる無冠の王になり、
もう一人は「狼」の名を負って、
かつての友、今のリーダーを補佐した。
   ―——勇士の期待(聖遺物物語)

正当な騎士の一族出身のエレンドリン農民出身のルースタンは、子供の頃から一緒に成長してきた仲間である。
英雄になるという共通の夢により二人は仲良くなった。
   ―——西風大剣(武器物語)

傷ついた狼と癒しの少女

それから時が経ち、少年たちは精悍な青年となり、いくつもの手柄を立てます。

エレンドリンは西風騎士団の団長となり、ルースタンは親友にしてその信頼する副官となります。

英雄になるという共通の夢により二人は仲良くなった。そして同僚に、さらに団長とその右腕となった。
団長となっても、エレンドリンは神の目を授かることはなかった。力の源は天賦の才と努力によるものである。
彼は自分の力を誇りに思った。騎士団、さらにモンドの人々も、このような優秀な団長がいてくれることを誇りに思った。
   ―——西風大剣(武器物語)

しかし、その頃からルースタンの顔には黒い影が張り付き笑顔が消えました。

彼の忠誠はモンドとそのモンドを象徴するエレンドリンに向けられていました。彼のために、ルースタンは夜のモンドを駆ける影となります。

モンドのためにならないものを抹殺する暗殺者として。

クロイツリードの組織はずっと機能していたという噂がある。
モンドを護るため、西風騎士の代わりに騎士道の精神に背く汚い仕事を請け負っていたそうだ。
また言い伝えによると、「幼い狼」ルースタンも大団長の名義でこの無名の組織を運営していたという。
   ―——鐘の剣(武器物語)

ある人の「堅い盾になりたい」という意志を象徴する羽根型の安全ピン。
羽形のブローチに刻んだ盾の紋章が月の下で光っていた。
それは賊をぞっとさせる光でもあった。
守護者には非常に気高い騎士の名をもっていた。
けれど夜には、その紋章と顔をマントの下に隠した。
こうすると、彼の束縛を受けずに、
騎士としてはできないことを成すことができるようになった。
   ―——守護の印(聖遺物物語)

時計針の音、燭光、案件の巻、月の下の人影、剣と黒いマント
これらすべて守護者が傍にするものであった。
しかし何をしても、彼にとって時間は短く感じるだけだった。
朗らかな上司は彼の無口とつまらなさを笑った。
守護者に過去なんてない。彼が目にするのは現在と未来のみ。
彼の目下には、どんなてを使って悪を追い払って、
親友と、上司が愛する地の平和を守ることしかな
い。
   ―——守護の置時計(聖遺物物語)

「クロイツリード」とは1000年以上過去に貴族に反乱を起こした流浪の楽団の一員です。反乱は失敗し関係者は処刑されましたが、組織自体は秘密結社としてルースタンの時代まで受け継がれていました。

モンドの守護者となり、悪を消すルースタンにはもう幼いころの臆病な面影はありません。手を血に染めた彼の顔は無情の仮面に等しいものです。
しかしルースタンは本当は傷ついていました。心の奥底で本当に本当に傷ついてたのです。

しかし、そんなときにルースタンはモンドの広場で、歌が好きな少女と出会います。
少女の名前はロザリン。遠い遠い遥か未来において、「炎の魔女」と囁かれる伝説を生み出すなど、この時は誰も知る由もありません。

「西方の風が酒の香りを連れて行く」
「山間の風が凱旋を告げる」
「遠方の風に心が惹かれる」
「サラサラと君への想いを歌う」
かつて、いつも悲しげな騎士がいた。
この歌だけが、彼の心の癒やしであった。
広場でこの歌を歌う少女だけが、
彼の仕事の疲れを癒やしてくれた。
   ―——終焉を嘆く詩(武器物語)

彼が世界のこと忘れるのは、
昼の広場で少女を見つめる時だけだった。
自分にも「未来」なんてあるのか…
   ―——守護の置き時計(聖遺物物語)

口下手のルースタンと少女のかわす言葉は決して多くはなかったけれど、少女の軽やかな歌声は守護者の心を癒します。

少女の軽快な歌声だけが、
守護者をすっきりさせた。
彼らの話しはすごく短い。
   ―——守護の花(聖遺物物語)

いつしか二人には愛が育まれ将来を誓い合いました。

少女は歌だけではなく学業も優秀だったのでしょう。スメールの教令院に留学することになりました。

別れの際にルースタンはロザリンに特製の水時計を渡します。その水時計はちょうど彼女の勉強する時間で一周分。
炎の「神の目」に祝福された少女は受け取った時計を胸に旅立ちます。

燃える魔女がまだ少女で、災いがまだ起こっていなかった頃、彼女が遠足へ出かける前に、
もらった特製の水時計。時計が一周回る時間は、彼女が教令院で勉強する時間と同じである。
   ―——魔女の破滅の時(聖遺物物語)

炎の魔女にとって、このような大きな帽子は周りの混乱を遮断してくれる。
まだ学生だった頃、この帽子のお陰で彼女は一心に炎の力を鍛えることができた。
   ―——焦げた魔女の帽子(聖遺物物語)

「古国」の災い――歪む命運

しかし少女がスメールに留学中、全ての運命を変える出来事が発生します。
古国―—カーンルイアに災いが降臨し、その戦火はモンドにまで及んだのです。
大地を揺らすほどの魔物の襲来と、邪龍ドゥリンの降臨によりモンドは計り知れない被害を受けました。

モンドの騎士団は故国のために立ち上がり戦います。
もちろんその中にはルースタンの姿もありました。

古国に降臨した災いの戦火はこの地にまで及んだ。
風が運ぶ喜びの詩は、毒龍の咆哮や、
大地を揺らす魔物の足音、そして啼き声と烈火に飲み込まれた。
王位継承を望まぬ風神は慟哭に気づいた。
旧き友の夢を守るため、風に恵まれた緑の野原を守るため、
風神は長い眠りから目覚め、天空の紺碧の龍と共に戦った
そして、騎士と騎士団も自分たちの国と故郷のために戦った
   ―——終焉を嘆く詩(武器物語)

モンドが恐るべき脅威に劣勢を強いられる中、人々の求めに応じて風神バルバトスは目覚め、風龍トワリンとともにドゥリンと戦います。
激しい戦いが繰り広げられ、最後にはトワリンの牙がドゥリンを貫き、毒龍はドラゴンスパインの寒天の雪山に墜落します。
しかし、トワリンは毒血に腐食を受けて汚染され、バルバトスもまた永い眠りにつくことを余儀なくされます。

「キミは「ドゥリン」とこの雪山の話を知っているかい?」
「「ドゥリン」、つまり数百年前に「風神バルバトス」と「トワリン」が共に倒した、モンドの脅威だった黒龍のことだ。」
「激戦の末、打ち負かされたドゥリンは空から落ち、真っ白い雪の中に打ちつけられた。
   ―——アルベド(白亜と黒龍 第一幕 腐植の剣より)

こうして災いとの戦いは終わりを告げ、人々は風神と龍の戦いを称えます。

しかし、戦禍により失われたものが戻ってくることはありません。
その失われたものの中には少女の想い人―—ルースタンも含まれていました。
ルースタンは邪龍ドゥリンに勇敢に立ち向かい、そして敗れたのです。

猛毒の龍が氷結の山に落ち、紺碧の龍が尖塔の古城で眠りについた時、
騎士は谷戸で命を落とした。最期の瞬間、少女の姿が脳裏に浮かんだ
遠方に留学した彼女は無事だろうか。もっと彼女の歌を聞きたかった
「まだエレンドリンとローランドが生きている。彼女が戻ってくる時、この災害は収まっているはずだ――」
  ―——終焉を嘆く詩(武器物語)

27歳の時、ルースタンは「幼き狼」の名を授かった
西風騎士団の伝統によると、獅子か狼の名を授かった騎士は、
いつの日か、騎士団を率い、全身全霊でモンドを護る大団長になる。
しかし、ずっとモンドを守り続け、モンドのために全てを捧げた彼にその日は来なかった。
   ―——西風剣(武器物語)

「あんたも毒と共に大地へと戻った。」
   ―——溶滅の刻(「淑女」討伐素材)

ルースタンの死を受けたエレンドリンは全てを放棄し、故郷に帰還し思い出に浸るようになります。

しかし、ルースタンが亡くなって以来、エレンドリンが自らの力を示すことはなくなった。凶暴な魔獣に挑むことが誇りであるとも思わなくなっていた。
   ―——西風大剣(武器物語)

疲れた勇者は寝室に戻って、子供の頃集めた冒険の証を探し出した。
数年前に隠した黄色い花を見て、勇者はびっくりした。花は少しの枯れ気味もなかった。
すべてが花のように、朽ちることがなければいいのに。
   ―——勇士の勲章(聖遺物物語)

ルースタンの弟子、白の騎士ローランドはその鎧が古国の魔物の血で染め上げられ、血染めの騎士と呼ばれるようになりました。

純白で高貴な騎士は、正義の道を求めていた。
光沢のある銀の鎧を身に着け、鏡面のように明るい長剣を携えていた。
不公平を訴える人々のところへ、人食いの魔獣が現れたところへ、遠方の炎が燃えているところへ、
騎士はすぐその場に赴く。一、斬る。二、振り下ろす。三、突き刺す。
彼に騎士道や正義、剣術を教えてくれた「幼い狼」の訓戒に従って、
  ―——黒剣(武器物語)

騎士が100回目の魔物を討伐し、危機から人を助けようとした時、
女性が彼の助けを拒否した。その時、血染めの騎士は気づいた。
戦いの中で、自分の血と敵の血に染められた自分の顔は、
魔物より怖くなっていた。
   ―——血染めの鉄仮面(聖遺物物語)

そして――水時計が一周しスメールからモンドに帰国した少女の目に映ったのは、愛しい人がもはや永久に失われてしまったという現実でした。

時計が一周回って、彼女が故郷に戻った時、時計をくれた人はすでに災いの糧となっていた。
   ―——魔女の破滅の時(聖遺物物語)

百年前*の災難が起こった時、少女は結んだ約束を全て失った。
大切な人たち、思い出の時間、輝く未来、何もかも失った。
   ―——魔女の炎の花(聖遺物物語)
   *「百年前」というのは誤訳で原文では「数百年前」となっている

燃え盛る炎の魔女の生誕——そして

少女の癒しの歌は嘆きの歌へと変化し、そしてやがて声すら枯れてしまいます。
少女は炎の力を以って、この世の全ての魔物を焼き尽くして燃やし尽くして焦がし尽くして全てを灰燼に帰する道を選びます。

少女の時間はこの瞬間に静止した、そして炎の魔女の破滅の時が始まった。
世の全ての魔物と、魔物による苦痛を焼き尽くすまで
   ―——魔女の破滅の時(聖遺物物語)

少女が歌っていた大好きな歌も、彼女が帰郷してから歌詞が変わった。
「蒲公英は朝の風と旅に出る」
「秋の風は収穫をもたらす」
「しかしどんな風も」
「あなたの眼差しをもたらしてはくれない」
涙も歌声も枯れた時、少女は命を燃やし、世界を浄化しようと決めた…
  ―——終焉を嘆く詩(武器物語)

煙と余燼の中から、炎の魔女が誕生した。彼女は炎で全ての痛みを消した
だが、この花はなくならない。ずっと生き生きしとして柔らかく瑞々しい。
多分その中にある苦痛と美しい思い出は、彼女の2つの内面を表すものなのであろう。

   ―——魔女の炎の花(聖遺物物語)

彼女の害するものはあくまでも魔物でしたが、執拗なまでに魔物を焼き尽くすその姿は人々に恐怖を与え、「炎の魔女」と呼びましたが、彼女にはもはやどうでもいいことでした。

かつて世の魔物を全て燃やそうと夢見た炎の魔女が触れた鳥の羽根、常に烈炎と同じ温度を保っている。

地獄の炎の道を歩んだ彼女
、その野原には灰燼しか残らない。
たとえ彼女が焼き殺したのが人に害を加える魔物であろうと、彼女の火を見た人は、ドアと窓を閉めて、炎の魔女を遠ざけた。でも彼女は気にしなかった。
全ての苦痛を焼き尽くさないと、新たなる希望はないと彼女は思った。
理解はいらない、人の慰めはいらない。人の同情もいらない。
   ―——魔女の炎の羽根(聖遺物物語)

全てを焼き尽くす紅い炎を操る魔女は深い帽子に全てを隠し、もはや自身の顔すら見えず、ただただ魔物を燃やし最後には己の肉体すら焼き尽くして炎の化身と化します。

戦闘に身を投じた後、この帽子のお陰で、烈火に飲まれて灰燼になった魔物の顔を見ずに済んだ。
この帽子のお陰で、水面に映った自分の顔を、煙と烈火によって焦げた顔を見ずに済んだ。
魔女はこうして盲目的に焼き続けた。
   ―——焦げた魔女の帽子(聖遺物物語)

人们传说她放弃了人的血肉,体内奔流的是液态流火
(人は彼女が人間としての血と肉を捨て、その体は流れる火の化身となったと話す)
 ―——魔女の心の炎(聖遺物物語)
*日本語版は文意が異なると判断したため、原語を改めて再翻訳した

しかし、元は人の身でありいつしかそれに限界が来る日が訪れました。

誓いを果たせぬまま燃え尽きようする彼女の前に「仮面」を被った男が現れたのです。

彼の名はペドロリーノファトゥス執行官第1位の「道化」

「貴様は実に不思議な存在だ。人間の体で、それほどまでの力を背負うとは。」
「涙と血はもう流し尽くしたと言っていたが、炎で体を満たしただけであろう・・・」
「満身創痍になろうと、傷口と両目から流れるのは灼熱の炎のみ。」
「話が逸れたな。私が狼煙をたよりにここへ来たのは、貴様と交渉するためだ・・・」
「我らが『陛下』 の恩恵で貴様の炎を飲み込もう。どうだ?」
一人目の愚者は命の炎が尽き果てようとする少女に「力」を授けた、
少女は「妄念」を通して穢れた過去と無垢な未来の境界を見た・・・
   ―——無垢の花(聖遺物物語)

かつて少女であった炎の魔女は、差し伸べられた手を取ります。
「天理」に対抗しようとする氷神を知った炎の魔女は、彼を助けられなかった愚かな神々と歪んだ深淵とそれを生み出す根源——「天理」を浄化するために再び立ち上がりました。

「私とあんた、それにあんたの女皇とは、目的が一致している。」
「愚かな神々、漆黒のアビス―それら世界の歪みを生み出す根源を浄化する。」
「いいでしょう。その目的を実現するためなら、何をしてもかまわないわ。」
「だって私、白衣を着ていても、もうとっくに洗い落とせないほど死骸の油と灰に染まっているもの。」
   ―——無垢の花(聖遺物物語)

そして―――

ファトゥス執行官第八位——「淑女」

時は再び流れ現代へ。

自由の国モンドにはスネージナヤの使節であるファデュイが訪れていました。

その中にかつてモンド人であった少女がいることなど、もはや誰も知る由はありません。

執行官はみな邪眼を身に着けていますが、他の執行官が増幅装置として邪眼を使っているのに対い、「淑女」の場合は自身すら燃やし尽くしてしまう炎を抑えるために邪眼を使用しています。

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しかし、魔女にとって炎とはもはや自分自身。炎を封印したとき、魔女は「少女」としての自らの過去を忘れ、執行官——「淑女」として目的に邁進します。

まずモンドを風魔龍の脅威が襲い、街中が混乱する中で神の心を奪うために「風神」の隙を伺います。

トワリンの毒を浄化し、風魔龍事件は解決したと油断したウェンティに「淑女」が襲撃し「神の心」を奪います。

淑女は恋人を死に至らしめた魔物を憎んでいましたが、その憎悪の対象は魔物をのさばらせる不完全な神にも及んでいます。

もはや「少女」の記憶は失われているのですが、ウェンティに対する態度から深層心理ではその憎悪が燻っていたのでしょう。

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消え去った私の過去を堅氷で満たし、燃え続ける炎を消そう。
漆黒の闇、世界の痛み、人と獣の罪、それらすべてを沈黙の氷で浄化しよう。
それでも、蒼白で無垢なる炎は彼女の心の中で燃え続けていた・・・
   ―——無垢の花(聖遺物物語)

かつてモンドを襲った毒龍ドゥリンを風神と風龍が撃退したとき、人々は神と龍を賞賛しました。

淑女からすれば、恋人を守れなかった風神——ウェンティが賞賛されることなど許せることではありません。

また、Ver1.2の限定イベント「白亜と黒龍」ではファデュイがドゥリンの亡骸から作られた「腐食の剣」を淑女のためにと奪いにきますが、ドゥリンは淑女の恋人の直接の仇です。

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ファデュイは神に関する品物を常に求めていますが、ドゥリンとの関連も知っていたのかもしれません。

そして璃月での岩王帝君の死に関する駆け引きを経て、稲妻でついに旅人と「淑女」は対峙します。

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そして旅人との戦いの中で淑女の氷が解けたとき、彼女は全ての記憶を取り戻しました。

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「淑女」——その真の名である「ロザリン・クルーズチカ・ローエファルタ」は旅人との戦いに挑みます。

そして、その中で彼女は自身の記憶を取り戻し、夢の中で彼——ルースタンと再会します。

「私は長い夢を見た。」
「夢の中では、私たちが作った純白の世界で、あんたと再開した。」
「ようやく目が覚めた。私はとっくに炎に飲み込まれ、あんたも毒と共に大地へと戻った。」
「しかし、もう問題ないわ。前に進み続けるためには、後ろにあるものをすべて燃やし、彼の言った永遠に純白で汚れのない王国を信じる必要がある。地平線の果て、『陛下』の夢の中、彼に見せられた『妄念』の中を…」
   ―——溶滅の刻(「淑女」討伐素材)

氷の封印が解かれ、過去の意思が蒼白の牢獄を突き破った。彼女が再び元の名前を思い出した時、不死鳥は血肉の灰塵と共に飛び散っていく。そして彼女も、大地を徘徊し、烈炎を放ち、罪を燃やし尽くした過去と二度と会えなかった人物の顔を思い出した。
   ―—— 獄炎の蝶(「淑女」討伐素材)

しかし、記憶を思い出してもそれは既に取り返せない過去の想い出。
魔女としての力を奮い、ロザリンは旅人と戦い――そして敗れました。

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最期は雷電将軍の「夢想の一太刀」の前に消えゆきましたが、彼女は本当に真から「悪」だったのか・・・。

それが分かるのは氷神の真意が明かされる時でしょう。

その他考察

・「淑女」の意味

ファデュイ執行官たちのコードネームはイタリアの仮面即興演劇(コンメディア・デッラルテ)のストック・キャラクター名から取られています。

このうち「淑女(ラ・シニョーラ)」は既婚女性という意味でお色気たっぷりの女性が演じることが多い役柄です。

ロザリン自身は結婚まではしていませんが、ルースタンと恋仲であったため割り当てられたのでしょう。

・名前の意味

「ロザリン(Rosalyne)」はラテン語で「綺麗なバラ」を意味し、「ローエファルタ(Lohefalter)」はドイツ語で「燃える蝶」を意味します。
どちらもシニョーラをイメージするに相応しい言葉でしょう。
*(シニョーラは「紅蓮」を操るので蛾と蝶だとイメージが違うと思われるかもしれないが、美しい羽根=蝶という区別は日本特有の文脈である)

・「ドゥリン」の襲来と「魔女」の時間軸の話

邪龍ドゥリンがモンドを襲来したのは、約500年前のカーンルイア滅亡の際にですが、これを約100年前と誤解されがちです。
これは、書籍「森の風」にドゥリンの襲来は「およそ百年前」と書かれているためなのです。

およそ百年前、大陸全土が混乱の時代を経験した。暗黒の力が広がり、至るところが侵蝕された。数多くの蛮族が存在し、魔獣が大地を蹂躙した時代。人間の生活圏は城壁の内側まで圧縮され、外は危険に満ちていた。
その頃のモンドは苦しみに包まれていた。獅牙騎士の伝承者に相応しい人物が見つからず、西風騎士団も苦戦により人材を多数失う。その時、強大な腐敗魔獣、毒龍「ドゥリン」がモンドに襲いかかってきた。
   ―——書籍「森の風」第二巻

しかし、実はこの書物自体が数百年前に書かれたものなので、要するにこれは時期を誤らせるミスリードなのです。

また、同じように聖遺物「魔女の炎の花」には「百年前の災難」と書かれているのですが、こちらの方は日本語が誤訳となっており、正しくは「数百年前」です。

百年前の災難が起こった時、少女は結んだ約束を全て失った。大切な人たち、思い出の時間、輝く未来、何もかも失った。
   ―——魔女の炎の花(聖遺物物語)

数百年前的灾厄到来时,少女失去了被许诺拥有的一切。
珍惜的人们、往昔的岁月、灿烂的未来,全部碎裂了。
   ―——魔女的炎之花(中国語原文)

要するに「森の風」の100年前はミスリードで、「魔女の炎の花」の100年前は誤訳ということで、他の装備品の説明から判断して両方とも500年前の時期を指していることに間違いありません。

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