お代はラヴでけっこう

【崩スタ考察】アベンチュリンの「モチーフ」に関する考察

  • URLをコピーしました!

*この記事の内容は中国の卿云上氏が投稿された記事をベースとして。著者から許可を受けたうえで、独自の解釈を大幅に追加し翻案したものになります。

砂金身世背景文化考据:吉普赛人的千年流浪哀旅

元々は4月4日にYoutubeでライブ配信した内容を再構成したものになります。

今回はスターピースカンパニーの登場キャラクター「アベンチュリン」のデザインがどのような文化的背景をモチーフとして作られたのかと言うことについての考察を記事にしました。

アベンチュリンは現実世界に存在するロマ民族及びジプシーを文化的モチーフとし、後天的に得た「ギャンブラー」としてのデザインモチーフがミックスされたものになります。

アベンチュリンについて

アベンチュリンの故郷は「ツガンニヤ」と呼ばれる惑星です。

よく見ると「蜂蜜」が滴っている

外部からは総じて「ツガンニヤ人」と呼ばれていますが、実際はこの星は幾つもの民族が勢力を争っています。

アベンチュリンは、その中で「エヴィキン人」と呼ばれる氏族の民として生まれました。

エヴィキンとは彼らの言語で「蜂蜜」を意味し、その名の由来は彼らが生まれつき美しい容姿と瞳と社交能力を持ち、他人から好感を得ることが得意なことからきているのですが、その能力が逆に嫉妬と恨みの対象に代わり、いわれなき誹謗中傷を受けることとなりました。

他の部族としてカティカ人が知られてますが、カティカは彼らの言葉で「剣(ナイフ)」を意味する通り、蛮勇を誇る戦闘民族でエヴィキン人とは対立を繰り返していました。

アベンチュリンの「文化的」モチーフ

そもそもアベンチュリン(砂金石)とは

「アベンチュリン」とは日本語では「砂金石」と呼ばれる宝石の一種です。
主産地がインドで翡翠に似ていることから「インド翡翠」という別名があります。

ゲーム中では、この「翡翠と似ている」という特徴から「ジェイド(翡翠)の基石」を「アベンチュリン(インド翡翠)の基石」であると偽ってサンデーの目を欺くトリックが使われました。

色なのに「砂石」と呼ばれるのは、石英の中に雲母などの内包物が含まれると内部に反射が起こり、キラキラとした「砂金を置いたような」輝きを放ち、これが「アベンチュリン効果」と呼ばれているからです。

何故、「砂金=アベンチュリン」となったのかというと、これはイタリアの職人が誤ってガラスに銅クズを混ぜてしまったところ、偶然にもキラキラと美しく輝くことを発見しました。

この偶然できた綺麗なガラスはイタリア語の「偶然(a ventura)」を由来として「アベンチュリンガラス」と呼ばれるようになり、これをきっかけに自然の宝石にも同様にキラキラと輝くものを「アベンチュリン」と呼ぶようになったのでした。

また、この「a ventura」には「偶然」以外にも「冒険」や「機会」という意味があり、それを由来としてアベンチュリンは「幸運の石」と呼ばれるようになりました。

更にキラキラと輝く光が金や富を連想すると言われているのも彼のイメージと合っていますね。

「ツガンニヤ」について

ツガンニヤは「デネス-プルーチェン-ドナウ」三大星系に隣接する主のいない星域で、気候がとても厳しいことで知られています。

ここにある3つの星系は、それぞれ地球にかつて存在していたモルダヴィア公国という国に接していた3つの川の名前とリンクしています。

デネス(Dnies)=ドニエストル川(Dniester)
プルーチェン(Pruthian)=プルト川(Prut)
ドナウ(Dorneau)=ドナウ川(Donau)

ただしツガンニヤ自体は、モルダヴィアそのものではなく、その中の一部が属している遊牧の民ジプシーをモチーフにしています。

ツガンニヤ人は大部分が遊牧を営んでいるということと、本国語では「茨冈尼亚」と表記されているのですが、この茨冈(岡)とはジプシーのことです。

日本語での命名は「ツィガン(ジプシーのロシアの呼称)」「ツィゴイナー(ドイツでの呼称)」から取ったのかもしれません。

またジプシーは単一の民族をさすのではなく、様々な諸民族の総称であり差別用語ですが、「茨冈」はその中でも「ロマ」と呼ばれる民族を指す単語です。

エヴィキン人は彼らの言語で「蜂蜜(Avginを意味しますが、これはロマ語の「蜂蜜(Avgin)」と一致しています。

このことから、アベンチュリンの属するエヴィキン人のモチーフがロマ民族である可能性は高いでしょう。

ロマ民族は国を持たないため、ヨーロッパ文明から公式に差別を受けてきた文化があり、物乞いや泥棒やスリで生計を立てているという偏見がありました。

というよりも、それはある意味では歴史的事実であり彼らは差別を受けてまともな定職に付けなかったので、「定職に付けない→犯罪で生計を立てるしかない→犯罪者は信用されないので定職に付けない」という負の無限ループに陥っていました。

彼らがキリスト教を信仰にしておらず、彼らの視点では異端である魔女やまじないをしていたことも差別の要因とされています。

これが、ゲーム内での設定である「星神体系から外れた独自の信仰」に該当していると思われます。

ロマ民族は過酷な生活環境を送ってきましたが、ツガンニヤも同様に複数の恒星の星風による影響を受けている影響で惑星の表面の生存環境は過酷です。

三つ目の地母神「フェンゴービヨス」

彼らの信仰する三つ目の地母神は「フェンゴービヨス(Fenge Biyos)」と呼ばれています。

この名前は2つの部分に分けられ、前者の「フェンゴ」はトルコのロマの伝説の救世神「ババ・フィンゴ」に由来し、後者の「ビヨス(Biyos)」はバルカン半島の愛の神「ババ・ビジョス(Biljos)」に由来すると考えられます。

厳密に言えば、上記の神々は「守護聖人」と呼ばれるものであり、他の神話における自然神とは異なります(独自の信仰体系

ここで注目したいのが守護聖人「ババ・フィンゴ」へ祈るお祭りであるカカヴァ(Kakava)です。

https://en.wikipedia.org/wiki/Kakava

名前でピンと来た人もいると思いますが、アベンチュリンの本名である「カカワーシャ」彼が地母神ファンゴ・ビヨスへ祈る祭りの日である「カカワ」に生まれたからです。

このカカヴァの祭りは5月5日から5月6日の夜まで続くので、アベンチュリンの誕生日は地球歴換算で5月5日か6日になるのかも。
(最もスターレールの世界観で現実世界の暦を合わせていいかは何とも言えませんが)

ちなみに、同じ5月5日から6日にかけて他のロマ民族が行う同様の祭りに「フドゥレルレス」と呼ばれるものがありますが、こちらは「幸運」を願う祭りになっています。

ちなみにアベンチュリンは5月の誕生石でもあるので、5月という時期には色々と縁が深そうですね。

また「三つ目の地母神」のイメージは、フランスのジプシーが信仰するロマの守護聖人「黒いサラ」そこから派生する神が由来と考えています。

「黒いサラ」とはキリスト教の聖人である「3人のマリア」の従者で、ロマ民族と同じインド・アーリア系と言われていますが、その名前「サラ・ラ・カリ」はインドの女神「カーリー」からきているという説があります。

カーリーと言えば、女神転生シリーズなどでおなじみの「3つの目を持つ地母神」ですね。

しかし三つ目の地母神は人に試練を与える神でもあります。

同じツガンニヤ人であるカティカ(卡提卡)氏族が「剣(ナイフ)」という名前なのは、このカーリーの別名がカーリカ(卡利卡)であり地母神でありながらも、血と暴力の女神である側面を持っているからでしょう。

この地母神は「三つの目を持った左手」と表現されていますが、その原型は西アジアや北アフリカのイスラム世界に共通する掌型のお守りとして「ファティマの手」と呼ばれるものがあります。

手のひらに目を入れるこの芸術形式は、古代メソポタミア文明の女神イシュタルのお守りに遡ることができます。

アベンチュリンのデザインモチーフ

ファミ通 No.1847に掲載されたデザイナーコメントによると、アベンチュリンのデザインはカンパニーの高級幹部としての「高貴さ」とギャンブラーとのしての「確率」を象徴したデザインと豪華な鳥であるクジャクがモチーフだと説明されています。

アベンチュリンは、意匠のところどころに「スぺ―ド」が見られ、所持しているカードは「スペードのエース」です。

またベルトや背中にはルーレットが配置されています。

トランプにおいて「スぺ―ドのエース」は最も強いカードなのでギャンブラーに好まれます。

ただし、同時に「死の象徴のカード」でもあります。

2.1のストーリーで最後にアベンチュリンが選ぶ道を暗示していたのかもしれません。

ちなみにアベンチュリンを採点すると「32点」と出ます。

32は「幸運の数字」とも呼ばれ、彼の必殺技のルーレットは32ポケット存在しています(リアルルーレットは37~39ポケットで、32ポケットは存在しないので狙っていそうです)

また、デザイナーの言葉通り、ストーリー中に彼は何度も「孔雀」に例えられます。

その言葉通り、アベンチュリンの帽子にはクジャクの羽が添えられ、ピアスは羽の形をしており、後方のコートの裾はクジャクの尾をイメージして作られています。

星魂解釈

アベンチュリンの星魂名は基本的に「ゲーム理論」や「行動経済学」に関する内容が中心です。

詳しく書くと長文になってしまうので簡単な説明とWikipediaへのリンクを貼るにとどめます。

①囚人のジレンマ

二人の共犯である囚人が犯罪行為をついて「自白」するか「黙秘」するかのどちらかをそれぞれ選び、お互いの選んだ選択によって刑期が変化するというゲームです。

Wikipediaに詳しい説明があるので、詳しくはそちらを呼んでもらえればいいのですが、ゲームのポイントとしては「全体の利益で考えるのであれば、お互いに黙秘が最適解だが、個人の利益だけを考えるのであれば自白が最適解」ということです。

あわせて読みたい

②限定合理性

これはギャンブルではなく経済学の領域です。

伝統的な経済学では、「人間は合理性を持って行動する」とみなされてきましたが、実際はそうではなく、人間は知識と情報の不完全性及び時間的な制約などにより限定的な合理性しか持つことができないという理論です。

あわせて読みたい

③最高倍率

これはギャンブルにおけるアベンチュリンのポリシーを指しているのでしょう。

アベンチュリンは必殺技で巨大なルーレットを出現させますが、このルーレットは赤と黒に分けられた「32」までの数字グリッドが描かれています。

プレイヤーは「数字・色・奇数偶数」にコインを散らして賭けるのですが、当然「当たり」が多い賭け方(ベット)をすると倍率が減っていきます

そしてここでアベンチュリンのスキル名を見ると、ストレートベットーー1点賭けのこと――と書かれています。

当然、これは最も確率が低く、最も倍率が高くなる賭け方です。

すなわち・・・「オール オア ナッシング(全てを得るか失うか)」ですね。

④予期せぬ絞首刑

予期せぬ絞首刑とは、数学者のガードナーが提唱したパラドクスの一種で、「予測不能な出来事が起こる未来」に「いつ起こるかを定められた期限がある」という条件がつくと「予測不能な未来」は存在しなくなるのではないかという理論です。

裁判官は死刑囚に対し、来週の平日に絞首刑が執行されるが、その死刑執行は囚人に予測のできない日になると告げます。
死刑囚は、執行日に独房のドアをノックされるまで、絞首刑の日を知ることができません。

この理論を計算したところ囚人は「この裁判官の宣言は不可能であるため絞首刑は行えない」という結論を下します。

まず「金曜日」はありえません。何故なら木曜日に絞首刑に処せられなかった場合、「執行は金曜日である」と予測できてしまうため、除外されます。

金曜日が除外されたため、水曜日に絞首刑に処せられなかった場合、絞首刑は木曜日に行われるという結論になるため、予測が可能になってしまいます。よって木曜日も除外できます。

同様の理由で、絞首刑は水曜、火曜、月曜にも行わうことが不可能という結論となり、絞首刑は行うことができないと結論付けました。

しかし、水曜日に囚人のドアをノックされ、死刑が執行されてしまいました。
彼は水曜日にノックされると全く予測ができていなかったため、裁判官が言ったことはすべて真実だった。

彼の推論はどこが間違っていたのか?

日本のWikipediaでは、これをテストに置き換えた「抜き打ちテストのパラドックス」として紹介されていますが理論は全く同じです。

⑤曖昧性忌避

これは「人間は確率が不明(曖昧)である選択を忌避する傾向にある」という経済学の理論です。

あわせて読みたい

⑥スタグハントゲーム

スタグハント(鹿狩り)ゲームとは、「鹿狩りの寓話」にちなんだゲーム理論の一種です。

二人のハンターがそれぞれ「兎」か「鹿」を選び、「兎」を選ぶと小さな利益が得られるが、鹿を選ぶと大きな利益を得られる。ただし、相手が「兎」を選んだ場合利益は0になってしまうというゲームです。

囚人のジレンマと似ていますが、片方だけが裏切った方が最大の利益であるのに対し、こちらは双方の協力が最大の利益となる点が異なります。

あわせて読みたい

その他

アベンチュリンは「父親が唯一残した服」をずっと大事に持っています。

しかし、アベンチュリンの父は息子が胎児の時点で既に死亡しています。

この時アベンチュリンを温めている衣類をよく見ると、ショタンチュリンの来ている服と同様のデザインが見つけられるので、これが父親の形見なのでしょう。

また、アベンチュリンが罠にはめて殺した奴隷の主人は「前任のアベンチュリン」でしょう。

この事件は「エイジハゾ-アベンチュリン事件」と呼ばれていますが、アベンチュリンとは「十の石心」のコードネームであり、当然この時カカワーシャはまだ「アベンチュリン」になっていません

加害者が「カカワーシャ」なのですから、他に「アベンチュリン」になるのは被害者しかいません。

ちなみに、カカワーシャはこの倒した「アベンチュリン」が身に着けている腕時計と指輪をそのまま使っているようです。

ツガンニヤの風習なのでしょうか・・・?

おわりに

スターレイルの世界はとても広いのですが、エヴィキン人の居場所はもうどこにもありません。

これは1000年以上に渡って未だに解決されていない放浪するジプシー-ロマ民族の問題を反映しているのかもしれません。

地母神が三度目を閉じますように

その血が永遠に巡りますように

旅がいつまでも平穏でありますように

…計略が決して露見しませんように

本ブログは酒カスが与太話を繰り広げるブログです
主な更新情報はTwitterで行っておりますのでよければそちらのフォローもお願いします。

  • URLをコピーしました!